2020年アメリカ合衆国大統領選は「マイノリティの得票を巡る戦い」だ。打倒トランプを目指して民主党から続々と出馬者が出、5月20日現在、空前の24人(*)となっている。うち、有力とみなされる候補者の多くが女性、人種民族マイノリティ、同性婚者だ。

 本稿では今回の大統領選におけるマイノリティ候補たちの位置付け、彼らが躍進している社会的背景を検証する。

*……一部のメディアは実質の選挙活動をおこなっていない1人を含めず、23人としている。

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女性、黒人、ヒスパニック、アジア系、ゲイ、30代……

 以前より出馬が確実視されていたジョー・バイデン前副大統領(オバマ政権)が4月下旬に、次いで5月にニューヨークの現役市長ビル・デブラジオが出馬表明をおこなった。これにより主だった顔ぶれがほぼ出揃ったことになる。

 立候補者の多くが皆保険制度の導入、地球温暖化対策などを訴えているが、政策の詳細を発表している者はそれほど多くない。選挙戦初期の現段階では24人もの候補者の中に埋もれてしまわず、有権者にどれほど強い印象を与えるかが重要となる。というのも、6月に行われる民主党候補者ディベートの初回に参加するには世論調査で規定以上の支持率、もしくは65,000人以上(*)からの政治献金(金額は不問)を得なければならないのだ。

*……米国では有権者(米国市民権保持者)だけでなく、永住権保持者(外国籍)も政治献金をおこなえる。

カマラ・ハリス ©getty

 現時点でディベート参加確定とみなされているのが以下の11人だ(順不同)。

・ジョー・バイデン(オバマ政権副大統領)
・カマラ・ハリス(上院議員)
・エイミー・クロブシャー(上院議員)
・バーニー・サンダース(上院議員)
・エリザベス・ウォーレン(上院議員)
・コーリー・ブッカー(上院議員)
・タルシ・ガバード(下院議員)
・ベト・オローク(元下院議員)
・フリアン・カストロ(オバマ政権住宅都市開発長官)
・ピート・ブーティジェッジ(インディアナ州サウスベンド市長)
・アンドリュー・ヤン(起業家)

歴代45人の大統領のうち非白人はバラク・オバマのみ

 11人の写真を眺めると、あることに気付く。米国大統領の典型像である「白人男性」が、わずか4人しかいないのだ。女性4人、黒人2人、ヒスパニック1人、インド系1人、台湾系1人、南太平洋系1人が含まれている。カマラ・ハリスの両親はジャマイカ移民とインド移民だ。4人いる白人男性もうち1人は同性婚者(ピート・ブーティジェッジ)、1人はユダヤ系(バーニー・サンダース)、残る2人はキリス教徒だがカトリック(ジョー・バイデン、ベト・オローク)だ。

 現在のドナルド・トランプも含め、歴代45人の大統領のうち非白人はバラク・オバマのみだ。女性大統領も、同性愛者の大統領もいまだ存在しない。宗教をみると、45人の全員がキリスト教徒だがカトリックはジョン・F・ケネディのみ。つまり、アメリカの歴代大統領はオバマとケネディを除き、全員が「白人・男性・キリスト教徒(非カトリック)・異性愛者」だった。

 この歴史を知ると、今回の大統領選がいかにユニークかが分かる。