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35歳女性の私が、大腸がんだと分かったあとに「受精卵」を凍結するまで

2019/06/06
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未来の赤ちゃんではなく、今生きている患者の命が優先

 そうして翌年の2018年11月にがんが発覚するのですが、その直後から、「2人目を望むなら“妊孕性温存”を考えたほうがいい」と医師から告げられていました。

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「妊孕性(にんようせい)温存」とは、抗がん剤や放射線治療といった妊娠する力を奪ってしまう可能性がある治療に入る前に、正常な状態の卵子や精子を体から取り出して保存しておくことを意味します。

 しかし、がんを告げられた当時ばりばり授乳中だった私は無月経な上に(注:授乳中は生理がこない人が多い)、もし生理がきたとしても前述の通り排卵障害持ちのため、排卵していない可能性が高いと思われました。

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 それでも抗がん剤治療は待ったなしで、私の場合、腫瘍摘出後2カ月以内に必ずスタートしなければいけないといいます。 

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 後日、妊孕性温存の専門家に聞いてはっきりとわかったことは、いくら妊娠を望んだとしても、がん患者の場合、優先されるのはがん治療だということです。

 それは患者の命が最優先であることと、がん治療を遅らせたことで万が一のことが起こり、生まれてきた赤ちゃんに親がいない状況を避けるためということでした。