「今のシニア層には肉体的に元気な方が多いですよね。子育てが終わり、孫の顔を見ても、まだ先がある。そうなったとき、『残りの人生で何をしたらいいのかわからない』といった漠然とした不安に悩まれる方が多いようなんです」(担当編集者の江川隆裕さん)

 そんな状況がありながらも、高齢者の心の問題に寄り添おうとする著作は少ない。大正5年生まれ、満100歳の著者による大ヒット中の本書は、貴重な1冊だ。精神科医として患者と半世紀にわたり向き合い続けた中で見つけ出した40個の「生きるヒント」を、語りかけるような穏やかな文章でまとめている。

「自分より若い人の言葉よりも、年上の方の言葉のほうが素直に受け入れられるところがありますよね。70代、80代になっても、やはり同じなんです。年長者の言葉を求めている。とはいえ、その条件に応えられる著者はなかなかいません。髙橋先生はちょうど、今のシニア層にとって親の世代にあたり、実際に『亡くなった母から励まされているような気持ちになった』という反響も届きました。内容もさることながら、高齢者に人生の先達として言葉をかけられる著者である点も、ヒットの要因として大きく感じています」(江川さん)

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 書名は河合隼雄さんの名著『こころの処方箋』を意識して決めたという。同じくらい、長く愛される本に育っていきそうだ。

2016年9月発売。初版8千部。現在11刷16万部

100歳の精神科医が見つけた こころの匙加減

髙橋幸枝(著)

飛鳥新社
2016年9月8日 発売

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