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平成史スクープドキュメントが伝えた「インターネット」の時代

2019/06/10

 いまでは、それ以前を想像するのが困難なほど、「平成の30年」とは、誰もが自由に情報を発信できるようになった時代だった。

 インターネットを普及させる原動力となったワールドワイドウェブ(WWW)の誕生が、平成元年(1989年)。それから、Windows95の発売によって、インターネットは私たちの暮らしに浸透し、平成半ばを過ぎると、人々はスマートフォンを手に、24時間情報を送受信するようになった。対照的に、これまで情報を独占してきたテレビや新聞といったマスメディアは、「マスゴミ」「印象操作」などと批判され、その地位は大きく揺らいだ。

 新たな証言や新発見の資料から激動の30年を見つめるNHKスペシャル「平成史スクープドキュメント」。昨年夏から、「平成」を7回にわたって描いてきたシリーズは、その最終回に満を持して、インターネットによって果てしなく膨張を続けた“情報空間”を捉えた。

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新しいインターネットの世代を象徴する「Voice up Japan」のメンバー ©NHK

放送時間が足りないほど

 この果てしなき情報空間を手繰り寄せるために、番組のターゲットにしたのは、日本のインターネット文化に圧倒的な影響力をもった二人の先駆者だった。近年相次いで亡くなった「Yahoo! JAPAN」の元社長・井上雅博、そして、ファイル共有ソフト「Winny」を開発した金子勇である。

 二人は別々の道で、新聞やテレビ、映画やゲームといった一部の“既得権益”に独占されていた情報を、よりオープンに、より自由に送受信できるよう、情報社会の理想を追い求めた。その足跡は、まるで新しい国を作るかのような興奮に満ちた挑戦と困難の連続で、放送時間がまったくもって足りないほどであった。

©iStock.com

 にもかかわらず、そんな二人の先駆者のシーンに加えて、平成の“情報空間”を描くために、どうしても構成に入れたい被写体がいた。それは、「誰もが自由に情報を発信出来るようになった時代」と評する際の、その“誰も”をはっきりと映像化することだった。エンパワーメントされた“個人”を捉えることは、井上や金子が推し進めた情報革命の結実を描くことであり、これからの“情報空間”を展望することができるかもしれないという期待があった。