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「まさに『亭主、元気で留守がいい』の夫婦関係です」

 いつしかそれはRさんにとって呪縛のようになり、ちょっと具合が悪いと、「いよいよ更年期障害が始まってしまったのかもしれない。ああ、私はもう終わりだ」と、必要以上にクヨクヨと落ち込むようになってしまったのだ。

 専業主婦として恵まれた生活を送り、一人息子も順調に育ち、手がかからなくなった。学校が終わった後も塾や習い事で夜の9時過ぎまで帰らない。夫は、朝早くから深夜まで自宅におらず、午前にかかることもしばしばで、土日も度々ゴルフに出かけてしまう。「まさに『亭主、元気で留守がいい』の夫婦関係です」というほどの仕事人間。もちろん、高収入だ。

 恵まれた状況にある専業主婦なのだから、時間にも、金銭的にもゆとりがあることを楽しめばいいはずなのに、ひたすら暇と孤独を持て余していた。

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「当時は朝から晩まで、ひたすら更年期に怯えて、鬱々として過ごしていました。ちょっと病気のような感じでしたね」

 ちなみに、夫とは10年以上性行為をしていない。子どもが小学校に上がった頃から徐々に回数が減っていき、いつしかなくなっていた。

――しなくて平気なんですか?

「いいの、いいの。もともと大恋愛をして結婚という感じではなかったし。というより、契約結婚みたいなものだから。逆になくてスッキリしているくらい」

――好きじゃないんですか?

「好きじゃないかもしれないです。もちろん家族としての愛情はありますよ」

――ご主人が浮気しているかも? と考えたこととかないんですか?

「浮気ねえ。仕事上の人に手を出してゴタゴタするとか、離婚になるとかじゃないなら構わないかな。でも、ウチの主人って、浮気できるようなタイプじゃないから。したことないと思う」

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 夫婦の会話もほぼないような状態にも拘わらず、浮気はないとなぜ断言できるのかが分からなかったが、ある一定の年齢になるまで「お互いに裏切らないできた」とのことだった。

 けれども、もし、夫婦の時間を持つように努力して、性的な関係も定期的にあったら、「病気のような感じ」になっただろうかという疑問もわく。

 というのも、その病気のような状態が改善したのは、Rさんの浮気だったからだ。