「ダンナと、してる?」

 ある程度のあけすけな話をできる“ママ友”と、夫婦のベッド事情について話すことがある。

 末子が小学校高学年ともなっていると、「まさか、ありえない!」「ムリムリ」と、“ない”ことが当然のように話す人の声は大きく、「まあね。たまにはね」と“ある”人の声は肩身が狭そうに小さくなる。

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 子どもを産み育て、夫婦生活も10年選手になってくると「ない」ことが当たり前で、「ある」のは何やら恥ずかしいことのようだ。

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 しかし、性欲は、食欲、睡眠欲と並ぶ自然な欲求の一つであるはずだ。「お腹すいた」「眠たい」というのは素直に口に出せるのに、性生活のことを口に出すのは、なぜ憚られるのだろう。それよりもむしろ、十何年間も、時には20年、30年もしなくて、平気なものなのだろうか。

「誰からも愛されないのでは?」という女性への悪影響

 かつて私には、パートナーと性行為をしない時期があった。

 20代半ばということもあり、「私はもう誰からも愛されないのでは?」と女性としての自信を失っていくばかりだった。もちろん性欲も溜まり、一人でした後に、「もしかして一生こうやって過ごしていくのだろうか?」と絶望したこともある。結局、そのパートナーとは別れたが、何年か経った後でも、女としての私を大切にしてくれず、したいと訴える私の気持ちを受け止めてくれなかったことは恨みとして残った。

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 しかし、これまでの取材を通し、「いつしかしなくなり、気づけば10年以上していない」と話す中年の男女は珍しくないことがわかってきた。その中の一人がRさん(54歳)である。

 30代で結婚し、まもなく生まれた息子と3人で都内に暮らす上品な女性だ。髪の毛をきれいに巻き、ネイルを施された手には結婚指輪だけでなく、ゴールドとダイヤモンドがきらめくブレスレットを着けていた。スラッとした体型のため、タイトスカートがよく似合う。その外見からは、ゆとりのある主婦生活を続けてきたことが窺えた。

 しかし、彼女は「パチンコにハマってしまった」という意外な過去を持つ。きっかけは“更年期”だ。

「若い頃から、閉経したら女として終わりと思い込んでいたんですね。40歳を過ぎた頃から『ああ、もうすぐ更年期が始まってしまう。もう女として終わりになってしまう』と感じていました」