優等生だった専業主婦が“グレた”きっかけはパチンコ
鬱屈した毎日を過ごしていたRさんだったが、引きこもりがちな日々を変えてくれたものとある日出会う。それはパチンコだった。
「ふと、近所のパチンコ店に入ったんです。そうしたら、大当たりしちゃったんです。ええ、ハマってしまいましたね。けれども、通うようになると、当然負ける日も出てくるじゃないですか。結果、家の貯金に手をつけてしまったんですよね」
――どれくらい? 30万円とか50万円くらいですか?
「それくらいで止めておけばよかったんですけどね。止められなくて」
金額は教えてもらえなかったが、100万円以上500万円未満ということだ。
――それまでずっと、いわば良妻賢母で生きてきたわけですよね。突然、グレちゃったってことですか?
と尋ねると、グレたという言葉がツボにハマったようで可笑しそうに笑いながら、「そうなの、グレちゃったのね」と言った。
――そんなに貯金を使い込んじゃったのがご主人にバレたら、「何に使ったんだ!」ってことになりますよね。
「そうそう。それでどうしよう? と思って、大慌てですよ。もう、高収入を稼げる仕事を探すしかないと、“そういう系”のお仕事を探せるサイトやフリーペーパーを色々見たんです」
2000年代半ばから“美熟女”“人妻”は人気のカテゴリとなり、牽引されるように、性サービスを行う店でも“素人奥様”をウリにした店が増えていく。そんな時代背景もあり、本物の美人素人奥様だったRさんは、すぐに店も決まって働き始めることになった。勤務時間は、子どもが学校に出かけて家事が一通り終わった昼頃から、21時には家に帰れる時間まで。
――お子さんやご主人には、パートに出るとか習い事をするとか言ったんですか?
「いえ、特に何も。だって二人とも私が平日の昼間に何をしているかなんて、興味ないですから。考えたことすらないと思いますよ」
――じゃ、「あれ? 最近のお母さんはよく留守にしてるな」くらいに思ってるってことですか?
「そうそう。だから、私がパチンコで貯金を使いこんじゃったことも、鶯谷のデリバリー店で働いていたことも知らないと思います」
私は、え? と耳を疑った。一緒に暮らしている家族なのに、こんなにも何も知らないということがあるのだろうか。
妻ってなんだろう、母ってなんだろう……10年以上専業主婦として家族の世話をしてきたのに、こんなにも家族から気にしてもらえない存在なのだろうか。だとしたら、鬱病のようになってしまっても不思議はない。