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被害者は1歳3カ月だった

 異変が起きたのは2017年11月。トクプッツァはタイの実家に、従兄弟と、従兄弟の母親であり、トクプッツァにとってはおばにあたる女性の3人で帰省していた。そして、おばが見ていない間、健やかに眠っていた従兄弟を持ち上げて自分の股間にすりつけ、快感に身を委ねた。

「この虐待の特にひどい点は、被害者が当時、1歳3カ月に過ぎなかったことだ」と女性裁判官は驚きを隠さない。

 もちろん、一番の衝撃を受けたのは被害を受けた男児の親たちだろう。2011年から2017年まで13回にわたり、息子2人が7歳ごろから虐待を受け続けた女性(トクプッツァの義理の妹)はその心の内を綴って裁判所に提出している。息子2人は子守代わりに親族のマッサージ店に連れられ、そこで股間を口や手で触らせられるなどの虐待を受けていたという。

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《2人の小さな息子を、本来なら(被告人によって)守られるべきだったこの2人を、こんなにも狡猾なケダモノとひとりきりにしてしまったことは、どんな母親にとっても最悪の悪夢です》

 女性の言葉を女性裁判官が引き取って言う。

「彼女の世界は一変した。家には誰もいれない。新しい土地に引っ越したが、新しい友達は作らない。信用できないからだ。子供からは一瞬たりとも目を離さない。彼女の家族に対する被告人の仕打ちは、彼女の魂までも殺した」

 何がこのケダモノを生んだのか。トクプッツァを鑑定した女性医師によれば、それを解くカギは本人の人生そのものにありそうだ。

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5歳のトクプッツァが出会った男

 トクプッツァは1988年にタイで生まれ、13歳でオーストラリアに移住するまで生まれ故郷で暮らした。母親は毎日働き、父親はいつも愛人と一緒で家に帰らなかった。育てたのは祖父母だ。「愛情を奪われ、両親に捨てられたと長い間感じていた」と医師は指摘する。

 その愛への渇望をゆがんだ形で満たしたのが、実家の向かい側で店を営んでいた男だった。男は、5歳のトクプッツァの股間を口に含み、自分の股間にも同様の行為をさせた。トクプッツァは家族の誰にもその秘密を打ち明けなかった。「この関係を続けたかったから」だ。親と違い、男は「愛」を示してくれたという。

 13歳。トクプッツァは家族とオーストラリアに移住する。移住先で待ち受けていたのは、またしても小児性愛者。今度は継父の男友達だった。