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「工場のまち」川崎はなぜ“借りて住みたい街”2位になれたのか?

2019/06/22
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「川崎駅周辺はよく知らない」という川崎市民も

 ここまで「川崎駅」が借りて住みたい街として人気の理由について見てきた。ところで、「川崎」の話というと川崎市全体として捉える人も少なくない。しかし、川崎市は「どの沿線」に住んでいるかで大きくまちの印象が異なることに留意したい。

川崎市の主な街と鉄道の位置関係(openstreetmapを基に筆者作成)

 例えば、川崎市北部を通る小田急小田原線のユーザーの麻生区民は「川崎駅周辺はなじみがなく、よくわからない。川崎よりもむしろ新宿や渋谷に行きます。川崎へ向かう南武線は昔よりも便利になったけど、朝や夜はとても混んでいるし、あまり使いません。ゴミ収集車から流れる『好きです かわさき 愛の街』や川崎フロンターレを応援するメッセージを見たときに『ああ自分は川崎市民なんだ』と実感します」という。

 また、川崎市内は小田急以外にも東急田園都市線や東急東横線も通過しているが、田園都市線沿線には川崎北西部の拠点「溝の口」があり、再開発ビル「ノクティ」を中心に若者が集まる。また、東横線はJR南武線・JR横須賀線が交わる「武蔵小杉」が近年大型再開発で急速に発展し、商業施設やタワーマンションが増え、それなりの拠点性を持つようになった。また、溝の口や武蔵小杉からは川崎駅に行くのとあまり変わらない時間で渋谷をはじめとする東京都心に気軽に出られる。

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溝の口を代表する商業施設「ノクティ」

 つまり、同じ「川崎市」でも「何線沿線か」によってエリアの雰囲気、買い物環境、外出先が大きく異なる。東京・大阪では同じ自治体でも「何線沿線か」で住環境やまちの雰囲気が異なると言うが、川崎市は顕著にその傾向が見られると考えてよい。「川崎」で住まいを探す際にはそうした点について十分考慮した方がよさそうだ。

写真=鳴海行人

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