川崎についてのイメージを聞けば、「工場が多くて空気が悪そう」「川崎駅周辺は治安が悪い」という声を聞くことは少なくない。しかし、今年2月に株式会社LIFULLから発表された「首都圏『借りて住みたい街』」では「川崎」が2位にランクインした。
このランキングは不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」で1年間に検索された数や問い合わせされた数といったデータを「駅名」を基準に集計している。すると、実際の需要は川崎駅周辺にあるといってもいい。なぜそこまで需要が高いのだろうか。今回はその秘密を探っていく。
1日50万人以上が利用する「川崎駅」
「川崎駅」は2つある。JR川崎駅と京急川崎駅だ。JR川崎駅にはJR東海道線、JR京浜東北線、JR南武線が乗り入れており、1日約40万人が利用する。東海道線を使えば品川駅まで約10分、東京駅まで約20分、横浜駅まで約10分と利便性も高い。京急川崎駅はJR川崎駅の北東にあり、京急本線と京急大師線が乗り入れる。羽田空港へはこちらを使うのが便利で20分弱で行くことができる。京急川崎駅は1日約13万人が利用する。JRと京急を合わせると1日あたり50万人以上が駅を利用していることになり、ターミナルとしての規模はかなり大きい。
川崎駅周辺のまちはJR川崎駅の東西で姿が大きく異なる。東側は古くから市街化されていたこともあり、商店街や歓楽街が広がる。それに対して西側は主に再開発で生まれた大型施設とマンションが立地している。また、行政上もJR川崎駅の東側は川崎区、西側は幸区と異なる。
大きなバスターミナルで実感する「工場のまち」
まずJR川崎駅の東側のまちを見てみよう。目立つのはJRの駅ビル「アトレ川崎」だ。20~30代の女性をメインターゲットとしたテナントを中心に230店舗が8階建ての建物に入居する。そのうち約30店舗はJRの改札内のいわゆる「駅ナカ」で食品を中心に展開している。
駅ビルを抜けると京急線の高架との間に大きな駅前広場がある。タクシー乗り場と大規模なバスターミナルを中心に作られており、地下には飲食店が中心の地下街「アゼリア」が広がる。
バスターミナルは「海島」と「空島」と名付けられた2つの「島」に分かれ、川崎市臨海部や羽田空港方面へ向かう。ひっきりなしにバスが発着するが、行き先を見れば「富士電機」や「エリーパワー」、「鋼管循環」といった工場を連想させるものを多く見かける。昼間も本数は多いが、朝晩はさらに頻繁に発着し、どのバスも混雑する。「工場のまち川崎」は健在であることがわかる。