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衝撃の香港デモ、警官に肩を撃たれた僕が「それでも戦った理由」

現地取材シリーズ「燃えよ香港」#1

2019/06/21
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「十数メートル離れた場所から撃たれたんだ」

――Fさんは?

F: 僕は12日、朝8時から立法会の近くにいた。ずっと現場にいて、午後3時ごろから衝突がはじまり、(注.おそらくゴム弾で)左肩を撃たれた。仲間と一緒に立法会のなかへ侵入しようとしたら、十数メートル離れた場所から撃たれたんだ。かなり痛かったけれど、動くのに支障はなかったから抗議を続けた。あとで見てもアザはなかったし、(調理師の)仕事上でも影響はなかったよ。その後はすこし後方に下がって抗議を続けた。帰ったのは午後8時くらいになってから。

――(ゴム弾の)銃撃前に警告はありましたか? あと、先に原因を作ったのはどちらだったと考えていますか?

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F: 事前の警告はあったよ。あと原因については、僕らが「先にやった(=先動手)」ことは、まあ確かにそうなんだ。立法会の前に鉄の小型の柵が3つあって侵入を防いでいたんだけれど、僕らは制止を振り切って力ずくで入ろうとした。ただ、警官を殴ったわけじゃない。

K: ああ、確かに「先にやった」のは俺たちだったよ。進入禁止の柵をどんどん乗り越えようとしたのは俺たちが悪い。でも、警察はあんなことまでやらなくてもよかったんじゃないのか? ひどいヤツらだ、ちくしょうめ。

※路上を封鎖する香港警察。一時的に道路封鎖をおこなうときはこうした簡易柵が使われるが、9日夜や12日の衝突では抗議者側がこの柵の突破を図るなどして現場が騒然とした。2019年6月16日22時ごろ撮影 ©安田峰俊

「林鄭月娥は中国のイヌだ」

――今回、あなたたちが立ち上がった理由はなんでしたか?

K: 逃亡犯条例(の改正案)で自分自身になにか問題が起きるというより、香港人全体の問題だ。わけがわからない罪名で捕まえられて、中国大陸に送られるのは、みんなイヤだろ? 林鄭月娥(行政長官)は中国のイヌだ。それに、9 日夜に(デモ後の衝突で)逮捕された人たちの釈放も求めたかった。

F: 今回の改正案が通ってしまったら、香港と中国の違いがなくなってしまう。それはダメだ。

――あなたは生活上において、中国の脅威は感じますか?

K: 特に感じない。でも、うちの親父は身体が悪いんだけど、病院が中国人だらけでなかなか入院の番が回ってこないのは困るな。

F: 僕も感じていないな。食堂の調理師だから、同僚もみんな香港人なんだ。でも、大陸から来る人たちは香港を無理やり乗っ取ろうと(=霸佔)している。