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2019/06/22

稼いだ金を全部使っちゃう奴は……

 実際、『全国消費実態調査』(2014年)でいえば、高齢無職世帯の毎月の赤字額は約3.2万円から3.4万円で、必要な積立額は65歳から95歳までの30年間で約1,100万円となり、今回話題になった2,000万円からは大幅に減少します。それでも、貯蓄も満足にできない国民からすれば「そんなに足りないのか」という議論になるわけですが、いまの30代、40代で、自分らが高齢者になったあとで公的年金だけで充分に暮らしていけるという前提で将来を考えている人がどれだけいるでしょう。実際には「貯蓄は必要だ」と分かっていても、「目の前の生活と稼ぎを考えるとなかなか貯蓄に回せない」という若者がほとんどなのではないでしょうか。

 老後も安心して面倒を見てもらえると、稼いだ金を全部使っちゃう奴は、頭か稼ぎかいずれかが足りないということになります。冒頭で堀江貴文が叩かれているのも彼自身が「稼いだ金は全部使え」と、寓話『アリとキリギリス』におけるキリギリス2.0みたいな生き方を奨励しているからで、病気をしたり結婚をしたり子どもができたりして、まとまった金が必要になって立ち往生する人生を送りたくないならば、ある程度の貯蓄なしには詰んでしまうのは仕方のないことです。

 また、もらえる年金で遊ぶ金が出ないのならば個人や世帯の貯金から取り崩すのは当然であり、それでもなお足りなくて生活が困窮するようであれば生活保護もあり得るわけですから、その「将来2,000万円足りない」と言って煽るほうがおかしいのではないかと思うわけです。

©文藝春秋

 ところが、火付け役となった朝日新聞の山口博敬さん、柴田秀並さんの記者署名つきで報じられているこの記事においては「人生100年時代の蓄えは?」と題したうえで、この報告書が「政府が年金などの公助の限界を認め、国民の『自助』を呼びかける内容になっている」と報じています。

人生100年時代の蓄えは? 年代別心構え、国が指針案:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASM5Q53LGM5QULFA026.html

これがまた煽るようなひどい内容に

 記事本文は、中盤から「平均寿命が延びる一方、少子化や非正規雇用の増加で、政府は年金支給額の維持が難しくなり、会社は退職金額を維持することが難しい。老後の生活費について、『かつてのモデルは成り立たなくなってきている』と報告書案は指摘。国民には自助を呼びかけ、金融機関に対しても、国民のニーズに合うような金融サービス提供を求めている」として、金融庁は老後の資金不足に対応するために現役時代からの資産運用が必要だ、というレベルの内容しか報告書では踏み込んでいないことは明確に示しているわけですよね。

 なのに、金融庁のこの報告書があたかも「政府が年金などの控除の限界を認めて国民の老後資金確保などの自助を呼び掛けている」ような内容になっているわけですから、そりゃ勘違いした読者が朝日新聞の記事冒頭を鵜呑みにして、「国は年金制度を放り投げた」「ふざけるな」と誤読するのも当然と言えます。

朝日新聞東京本社 ©文藝春秋

 さらには、朝日新聞がアベノミクスの検証記事的なものまで追撃で出していて、これがまた煽るようなひどい内容になっております。

【画像】年収200万円未満が75% 非正規のリアルに政治は:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20190613002833.html

 第二次安倍内閣の発足した2012年度は、日本のまさに人口のボリュームゾーンである団塊の世代が65歳に達して次々と定年退職をする年です。そもそも60歳、65歳を超えて正社員で待遇し続けるのは、これから定職に就きたい若者世代からすると正社員の椅子が空かないことを意味しますから、本来ならば非正社員化は歓迎のはずです。

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