「年金を受け取らなくても元気で働けますよね? ね?」
当然、歳を取ってリタイアされてしまうと、富を生まず所得もなくなり年金を含めた社会保障のお世話にならざるを得なくなりますので、政策としては「人生100年時代」とか適当なことをいって現役世代を70歳以上にまで延ばし、「年金を受け取らなくても元気で働けますよね? ね?」という政策に転換していかなければなりません。
当然、昔は55歳、いまでは65歳が定年だと思って生きてきた日本人にとっては、もう年金がもらえる世代だ、ゴールだと思ったら貰える年代がさらに先になりそうだという話になって「年金制度は国家的な詐欺だ」と怒り始めるのもまあ仕方のないところかなと思うんですよ。
国や社会としては就労できなくなった世代は社会に利益を与えないので良きところで天寿を全うしてほしいと思いつつも、現代を生きる私たちは身近な爺さん婆さんには末永く元気でいて欲しいと願うのは当たり前のことです。そういう国の財政・社会と、社会保障制度で守られた国民との間では深刻な利益相反があり、国民が楽しく暮らせると思うだけのお金を充分にばら撒くことなど不可能だとなったところから、本来は国家戦略を考えなければならないわけですけれども、選挙を前にするとなかなかそういう正論も言い尽くせないんだろうなあと思うのです。
より煽動的で叙述的に報じようとする
でも、それと今回の年金問題の議論とは趣が違います。安倍政権を批判的に取り上げたいがため、本来であればもっと正面から捉えなければならない年金問題やアベノミクスへの評価をより煽動的で叙述的に報じようとするから、朝日新聞はメディアとしての信頼度が産経新聞以下の状況に陥ってしまうのでしょう。文春より上なのがムカつくけど。
高齢社会白書(平成30年度版)
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_2_1.html
Reuters Institute Digital News Report 2019 p137
https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/sites/default/files/2019-06/DNR_2019_FINAL_0.pdf
メディアの機能は権力の監視であり、朝日新聞がその役割をきちんと自認、自負し、良識をもって新聞を刊行し続けてきた点は評価されるべきだと思うのです。ただし、実際に一連の年金2,000万円不足問題で問われるべきことは、一見して金融庁はそんなこと書いていないはずの報告書の、本文にも入らない冒頭のところを切り出して、あたかも「政府が年金など公助の限界を認め、国民の『自助』を呼びかけ」たように報じてしまうことのほうに問題があるように思います。よりによって、そこを切り出すのかね。
政治家の発言を切り貼りして問題発言であるかのように報じて批判を誘発するのと同じぐらい、報告書の趣旨、本文と違った内容を切り取ってフェイクニュース同然の報道をするというのは、品質の高い報道を志す朝日新聞にとって自殺行為じゃないかと思うんですが。
INFORMATION
ついにこの日が来てしまった……。文春オンラインの謎連載、
その名も『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』。