早期化と長期化で“14カ月間”続く就活
現状の就活は、大学3年の5月に就職ナビへの事前登録が始まり、夏、秋、冬のインターンを経て、保守的な日本企業では大学4年6月に内定が出て終わる。
もちろん先の事例のように早期に就活を終える学生もいるが、大学4年の6月まで継続する人も多い。この場合、就活は、なんと実質14カ月間も継続することになる。
つまり早期化と長期化が起きているのだ。知人のB社人事はこう言う。
「早期化と長期化は何もいいことがありません。4年生の採用をやりながら、3年生のインターン用の面接をするなど、非常に手間とお金がかかっています。競合企業がやる以上はうちもやるしかありませんが、無意味な我慢比べみたいなものですね」
早期化と長期化は学生生活にも悪影響が指摘されている。実際に今年、私は大学1年生(文系女子)から次のような質問を受けた。
「半年間ほど海外留学を考えていますが、就活ルール廃止で、いつ頃行くべきか悩んでいます。念の為、行かないほうがいいですかね?」
就活スケジュールの混乱は、このように積極的な学生ほど影響を受けてしまう。もちろん留学以外にも、学業への圧迫なども指摘され、あまりに非合理的である。
経団連の意図とは別に、「就活ルール廃止」は、早期化と長期化を強化してしまっているように見える。何とも皮肉な現象だ。
かつての“5カ月間”就活に戻すべき
そこで私は短期的な解決策として、以前のスケジュールに戻すことを提言したい(長期的な解決策は自著『学歴フィルター』小学館新書に記した)。
2015年卒までのスケジュール「大学3年12月1日採用活動解禁→大学4年4月1日内定出し」に戻せば、就活期間は実質5カ月間となる。企業も学生も負担が減る。
この時代は本当に12月1日から就活を始める学生がほとんどだった。そしてゴールデンウィーク前後で大手企業の内定出しが終わっていた。
AIなどの高度人材の新卒採用においても、大学で長く研究時間を確保できる5カ月間の就活の方が合理的だ。
「でも企業は結局インターンで青田買いをするから同じことでは?」
そんな反論もあるだろう。そこでインターンは大学1年生、2年生限定のルールにする。以前、経団連が採用していた「倫理憲章」のように企業名公表などの罰則規定を設けて、実効性を担保する。これにより青田買いを一定程度、防ぐことができる。
また政府、大学から就職情報誌に要請し、インターンのナビ(リクナビ、マイナビ、キャリタスなど)は1年生、2年生のみ受け付ける(3年、4年生は不可)という制限を加えるのも有効だろう。
1年、2年生対象となれば採用に直結しにくいので、現在主流の1DAYではなく長期のインターンが増える。学生は早期に仕事を深く理解することができ、大学で学ぶ意味や、入社後のミスマッチを防止することが期待できる。短期的にも長期的にも合理的だ。
やるべきことは就活ルールの廃止ではない。早期化、長期化した、現状の14カ月間の就活を、かつての5カ月間に戻すべきではないだろうか。