文春オンライン

NHK「ネット常時同時配信」へ 問われる“約40秒のキスシーン”と“政権との距離”

批判の気持ちをすくい取った政党「N国」

2019/06/28
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籾井勝人前会長のコメントを報じた朝日にギョッ

 さらに板野氏の「実績」として、

《関係者によると、政権の意向を背景に「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスターの降板を主導するなど、放送番組への介入を繰り返したとされる。》(毎日・同)

 これまたハッキリ書いてある。

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 このあとに出た朝日の記事もギョッとした。

《板野氏をかつて放送総局長に登用したのは籾井勝人前会長だ。だが、その籾井氏までもが、板野氏と政権の関係が強すぎるとして、1期2年で総局長を退任させ「彼を絶対に戻してはいけない。NHKの独立性が失われてしまう」と当時の朝日新聞の取材に対しても口にするようになった。》(5月23日)

籾井勝人氏 ©文藝春秋

 政権と公共放送。先ほどのネット「常時同時配信」を認める改正放送法はもちろん、そもそもNHKの予算が国会で決まる。

《国会、なかんずく与党・自民党と首相の影響力を受けやすい仕組みの中にあるため、政治から圧力がかかりやすい立場にある。政治との関わりを避けては通れない公共放送として、これまで政府や与党との距離を何度も問われてきた。》(川本裕司『変容するNHK 「忖度」とモラル崩壊の現場』花伝社)

そんな気持ちをすくい取った「N国」

 こうなるとNHKへの批判の声も当然大きくなる。そんな気持ちをすくい取ったような政党の躍進が先の統一地方選で話題になった。「NHKから国民を守る党」だ。

「N国」のキャッチフレーズは「NHKをぶっ壊す」という一つの訴えだけ。目指すは、契約者だけがNHKを視聴できる仕組み「スクランブル放送」の実現(東京新聞・TOKYO Web6月21日)。

 しかし《党員に右派が多いとされ、過去にツイッターで「アイヌ民族はもういない」と書き込み、自民党を除名された議員もいる。》(東京新聞・同)

 フリーライターの畠山理仁氏は「日刊ゲンダイ」で「『NHKから国民を守る党』の内幕」という短期連載(12回)をした。

「研究し尽くし到達した『すべての選挙は売名目的』の境地」
「聞けば腰を抜かす 当選果たした公認候補たちのヘイト発言」
「現職が任期残しアッサリ辞職 ジバン軽視の『現金』な理由」

 これら各回のルポが大反響。新聞ウオッチャーから言わせてもらえば今年の新聞界でも必読の連載だったと思う。

 それもこれもすべては「NHK」が原因というか、出発点なのである。

 NHKをみんなで見守らないといけません。

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