文春オンライン

特集観る将棋、読む将棋

「将棋の強いおじさん」木村一基九段がAI時代に活躍している理由とは

「将棋の強いおじさん」木村一基九段がAI時代に活躍している理由とは

46歳の挑戦者・木村一基九段インタビュー #1

2019/07/03
note

これくらいやらなきゃダメなのかと衝撃

――木村九段が参加されている研究会といえば、通称「羽生研」が有名です。

木村 もう20年近くになりますか。当初は羽生さん、森下さん(卓九段)、松尾さん(歩八段)、そして私。10年ほど前に森下さんの代わりに村山さん(慈明七段)が入り、そして村山さんが今年の4月から関西へ移籍したので、青嶋さん(未来五段)が新メンバーに加わりました。とにかく序盤の知識がすごいメンバーです。

 研究家の集まりだけあって、ついていけないときに、わかったふりをしたこともあります。これくらいやらなきゃダメなのかと衝撃を受けました。今でもそうですが、けっこうハードなんですよ。そして皆さん、私が知らないところではもっと研究している、ついていくだけではだめで、超えるようにならなければと思います。

ADVERTISEMENT

 

――木村九段と羽生九段とのエピソードと言えば、2001年の竜王戦挑戦者決定戦で、羽生九段が木村九段に一手トン死を食ったことがありました。

木村 指された瞬間は、意外なところに玉を逃げるなと思いましたね。あの時は負けた直後の羽生さんが堂々と振る舞われていたので、第一人者とはこういうものかと思った記憶があります。

2001年9月1日第14期竜王戦挑戦者決定戦三番勝負第1局より。
図の王手に対して▲7六玉と逃げれば何事もなく先手勝ちだったが、羽生の指し手は▲6四玉。これは△6五飛と打たれて先手玉の行き場所がない。
この大トン死は「史上最大の大ポカ」と呼ばれて話題になった。
 

羽生さん相手に納得のいく将棋で勝てた

――直近では、竜王戦の1組3位決定戦と王位戦挑戦者決定戦で羽生九段との2連戦がありました。竜王戦には羽生九段の通算勝利記録更新がかかっており、また王位戦で挑戦を決めればタイトル通算100期に挑むことになるので、どちらの対局にも大勢の報道陣が集まっていました。

木村 私にとってはいつもの一局なので、特に意識はしませんでしたね。特に王位戦は菅井さん(竜也七段)とのプレーオフを指した直後(中1日)だったので、あっという間な感じです。羽生さんの記録は偉大ですが、まさか自分が当事者として巡り合うとは思っていませんでした。通算勝利が大山先生(康晴十五世名人)とのタイ記録に並んで、次は誰が指すのかと思ったら、俺か、と思ったのは記憶に残っています。目立っちゃうなあと考えましたが、自分が取材されるわけではないので、あまり気にしても仕方がないですね。

5月30日の竜王戦1組3位決定戦の対羽生戦 ©相崎修司

――その対羽生戦を連勝しました。

木村 羽生さんは目標にしている人でもあるし、勝つことが大変なのは今まででよくわかっています。その相手に納得のいく将棋で勝てたことは良かったと思っています。

写真=山元茂樹/文藝春秋

この記事を応援したい方は上の駒をクリック 。

「将棋の強いおじさん」木村一基九段がAI時代に活躍している理由とは

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春将棋をフォロー