昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

特集観る将棋、読む将棋

「将棋の強いおじさん」木村一基九段がAI時代に活躍している理由とは

46歳の挑戦者・木村一基九段インタビュー #1

2019/07/03

 豊島将之王位に木村一基九段が挑戦する第60期王位戦(主催:新聞三社連合)の七番勝負が幕を開ける。

 名人、棋聖と合わせて三冠を保持する豊島に対して、木村は自身初のタイトル奪取がかかっている。

 今年は挑戦者決定リーグで4連勝スタート。最終戦で敗れて菅井竜也七段とのプレーオフに持ち込まれたが、プレーオフを制して挑戦者決定戦進出。2日後に行われた決定戦では羽生との熱戦を制して、3年ぶりにタイトル戦の舞台に登場を果たした。

 動画中継や大盤解説会の解説者としては丁寧でわかりやすく、時折ユーモアを交えた話をすることで人気がある。現在では、ファンからもっともタイトルの戴冠を熱望されている棋士の一人である。

 

40代の半ばを過ぎて伸びしろがあるとは思わなかった

――先日、豊島将之王位に挑戦する王位戦の挑戦権を獲得しました。

木村 挑戦が決まってからいただいた応援のメッセージは、過去のタイトル戦の時と比較しても一番多かったですね。今年の3月に順位戦でA級復帰を決めてから、増えた気がします。羽生さん(善治九段)に王位戦で挑戦した3年前や5年前と比較しても、反響は大きいですね。

――タイトル挑戦、そして今おっしゃったA級復帰など、最近の木村九段は特に好調と見受けられますが。

木村 結果に結びついている、その原因がわかりません(笑)。私は今年で46歳になりましたが、40代の半ばを過ぎて伸びしろがあるとは思わなかったです。ここ数年は現状維持のためにずっと頑張っていたというのが正直なところですね。この年になると今の地位を維持するのも難しいですから、不思議な感じです。

 今は成績がいいですが、逆に言えば落ちていくときもあっという間と考えているので、その危機感のほうが強いです。例えば順位戦に関しても、一昨年の順位戦は4連敗スタートだったので、落ちるほうを意識していました。それではまずいと思って、技術的な取り組みを意識的に増やしました。

 

――具体的にはどのようなことを増やしたのでしょうか。

木村 最近のプロ棋界は特に序盤の作戦が大事なので、それについて考えることが増えましたね。あと、将棋ソフトの影響は計り知れないほど大きいです。3年前とも比べ物になりません。当時は人の考えを知ることだけで将棋がわかったような感じでしたが、トップクラスの方々は、さらに自分ならこうするという具体案を持っています。その小さな差が大きいので、そのあたりを意識して取り組むようになりました。