「大先輩の高倉健さんから受け継いでいるものもある」
駅長として赴任する直前は、グループ会社のJR九州ホテルズで社長を務めていた。お客さまをもてなすという点では、駅もホテルも変わらないと話す中野さんだが、今は自ら行動できる現場の楽しさを感じているとか。
「博多駅は1日777本の列車が発着します。列車が到着し、お客さまが乗り降りして、また出発する。安全に、そしてダイヤも正確に。それが当たり前となるように毎日やっていく。好きな場所は……やっぱりホームですね。行き交う列車とたくさんのお客さま、そしてそこを支えているホームの駅員と運転士・車掌が敬礼をして挨拶を交わす。そういう一瞬一瞬のふれあいが好きなんです。大げさに言えば、皆さんの生活の中の一瞬が、博多駅にあるという感覚です」
まだ赴任して3ヶ月の中野駅長。これからどんな博多駅を作ろうと考えているのだろうか。
「博多って、元気な街というイメージがあるじゃないですか。だから、お見えになるお客さまが博多らしさを感じる駅にしたい。押し付けがましくはなくて、でも活気があって、人懐っこくて。博多らしさを感じてもらえる駅にしたいですね。そして安全はもちろんですけど、安心できる駅でもありたい。通勤通学で毎日使うお客さまも、ご旅行でテンションの上がっているお客さまも、何か辛い気持ちになっているお客さまも、みんながなんだか安心できて、少しでもお支えできるような、そんな博多駅。そのために、駅員みんなで和気藹々と一緒に頑張っていければと思っています」
実は中野駅長、あの高倉健と同じ高校の出身だという。高倉健といえば、映画『鉄道員』では昭和の硬派な鉄道マンを演じた。「大先輩の健さんから受け継いでいるものもあるって勝手に思っています」と笑う中野駅長。そうは言っても、実は『鉄道員』の映画よりも先に中野駅長の方が鉄道員になったのだとか。そうした誇りも胸に、九州の玄関口・博多駅の舵をとる。何気なく通り過ぎることの多いターミナルだが、その裏では“駅作り”に力を注ぐ中野駅長のような駅長や多くの駅員がいることも、少しだけ気に留めてみてはいかがだろうか。
写真=鼠入昌史