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なぜ日本の会社では“天才タイプ”が殺されてしまうのか?

『社長の条件』冨山和彦氏×『天才を殺す凡人』北野唯我氏による “天才・秀才・凡人”対談#2

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天才を使いこなせない大企業、天才はどこで生きていくべきか

北野 そうすると、やっぱり大企業には天才は入らないんじゃないか、という気がするんです。20代の働きがいが、すごく低い会社もたくさんある。創造性のある人は、違う会社に入ったほうがいいんじゃないかと。

 

冨山 本来そういうタイプの人は、ゼロからイチの起点を創る仕事をして、社会的に貢献できたし、自己実現もできたはず。けれども、行く場所がないから、天才的な才能があっても大企業に入っちゃうわけですよ。こうなったら、もう悲劇です。

 入ってみたら、そこで行われているゲームは改良型ですから、天才な人が画期的なことを言ったって、「いや、それは君の言っていることは20年後には面白いかもしれないけど、今ちょっとそれどころじゃないんだから、これ直しておいて」みたいな話なわけです。

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 日本の大企業では、天才はたくさん殺されちゃったか、もしくはしょうがないから凡人のふりをして生きていたか、のどちらかでしょうね。日立の中西会長のような人は後者だと思う。 じつは中西会長は、スタンフォード大学大学院でコンピュータサイエンスを専攻したバリバリの理系。ご自身でもちょっと変わっている、というご自覚があったようです。けれども、日立のような大企業に入ったため、しょうがないから、凡人のふりをしていたのかも。そうしたら、自分が引退する前に、世の中のほうが激変してしまって、急に社長へとお呼びがかかったんですよ(笑)。

北野 やっぱり。

冨山 競合家電メーカーの東芝やシャープが悲惨な末路を辿ったのとは対照的に、川村会長(当時)とともに大改革を行い、奇跡的ともいえるV字回復を果たし、いまや日立は世界的なグローバル企業へと変貌しました。でも大概の人は、ああいう運には恵まれない。だから、天才タイプの人は、僕は早めに起業したほうがいいと思います。結論から言うと。仮にそこで失敗したとしても、いろんな学習ができる。そうすると、将来、大きな会社の経営者になれる可能性がある。

 社会全体を大きなダイナミズムで捉えたら、天才的資質を持っている人をどう活用し、社会のためにどう使い倒すか、ということを、この国はもっと真面目に考えたほうがいい。もっと流動的に考えたほうがいいんです。

 

 構成=上阪徹/写真=平松市聖

社長の条件

中西宏明

文藝春秋

2019年5月29日 発売

天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ

北野 唯我

日本経済新聞出版社

2019年1月17日 発売

 

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