「普通」仕様の800形が爆走している
「ありがとう 800形」特別貸切列車は、特別ゲストに鉄道大好きなダーリンハニーの吉川正洋さん、ななめ45°の岡安章介さん、ホリプロマネージャーの南田裕介さんを迎えて品川駅を発車した。3人は交替で車掌マイクを握り、車両の紹介や京急の豆知識、「タモリ倶楽部」の京急ロケのエピソードを語る。
しかし、発車前に南田さんが「走行中はモーター音が大きくて良く聞こえないと思います」と予告したように、800形の速度が上がるにつれてモーターが咆哮を上げた。
鮫洲駅では通過線に入り、「普通」を追い越した。ふだんの800形は追い越される側だけど、今日は追い越した。これは珍しい体験だ。車内もちょっと沸いた。私の好きな鈴ヶ森付近も快調に通過。そして大森海岸では停まらない。平和島駅も停まらない。京急蒲田付近で先行列車に追いつきそうになり、ちょっと徐行したけれど、やっぱり通過。すごい。
「普通」仕様の800形が、快特も停まる駅を通過し爆走している。感動して涙が出てきた。ちくしょう、鉄オタってバカみたい。いいんだ。バカだから泣くんだ。ちっ、めがねが曇ってきやがったぜ。
なんと、品川~上大岡間をノンストップ!!
川崎駅を通過、横浜駅を通過。スマートフォンアプリで速度を計測したら、時速100km前後を指しっぱなし。800形よ、こんな走りができたのか。最初に停まった駅は上大岡だった。なんと「京急ウィング号」なみのダイヤで走ってくれた。次に停まった駅は金沢文庫。そして金沢八景。ここから逗子線に入って、京急久里浜駅の手前から分岐し、乗客を乗せたまま、京急ファインテック久里浜工場に進入して停車した。これも貴重な経験だ。京急電鉄は粋な花道を用意してくれたなあ。
工場内で800形の撮影会が行われた。方向幕をいろいろ変更してくれて、最後は空港線時代に使われた行先表示板も登場。懐かしさもあって、年配の参加者はしきりにシャッターを押している。社員食堂では特別ゲストによるトークショウが盛り上がっていた。その後、参加者は工場内から別の電車に乗せてもらって久里浜駅へ。ここで解散となった。
帰り際、工場の皆さんが手を振って送り出してくださる。その奥に役目を終えた800形が佇む。ありがとう。最後にご機嫌な走りを見せてくれて。そして、きちんとお別れができて良かった。京急電鉄さんありがとう。自動車趣味の分野では「カー・ガイ」って褒め言葉があるけど、あなたたちはナイスなレール・ガイズだ。
写真=杉山秀樹/文藝春秋