JR西日本の観光列車「花嫁のれん」は金沢と和倉温泉間を結ぶ。運行日は主に金曜から月曜まで。観光シーズンは火曜日も走るし、月曜に運休する日もある。運行日は1日に2往復だ。
もともとは幕末の加賀藩で発達した婚礼の風習
金沢発和倉温泉行きに乗る場合、乗り場の手前に花嫁のれんが掲げられ、その暖簾をくぐり抜けてから乗車する。花嫁と言うくらいだから女性向け。男性がくぐると照れくさい。でも堂々と通り抜けよう。幸せな列車旅の始まりだ。
列車名の由来となった「花嫁のれん」は、幕末の加賀藩で発達した婚礼の風習だ。花嫁の実家が家紋入りの大きな暖簾を作り、嫁ぎ先の仏間の入り口に掲げる。そこを花嫁がくぐり抜けると嫁ぎ先の一員として迎えられる。つまり、花嫁の幸せの入り口が花嫁のれんだ。
列車の「花嫁のれん」も、乗客の幸せを願う気持ちを込めたという。ロゴマークは淡路結びの水引。輪を結び合い、簡単にはほどけないことから、末永い結びつきと和を表すという。車体の色は赤と黒、加賀友禅と輪島塗、そして金沢の金箔をイメージした。力強い色彩ながら、艶やか。花嫁衣装にも通じる色合いだ。
老舗料亭、世界のパティシエ、老舗旅館がコラボ
車内に一歩踏み入れるとみやびな空間に包まれる。2両編成のうち1号車は個室風。「桜梅の間」「撫子の間」「扇絵の間」「鉄線の間」「菊の間」「笹の間」「錦秋の間」「青の間」と名づけられた。8室は完全な個室ではなく、間仕切り壁はそれぞれのテーマの模様が入り、通路に面して細い木の柱を並べている。開放感とプライバシーの両方に配慮した作りだ。
2号車はテーブル席とカウンター席が並ぶ。室内を広く見渡せて開放感がある。カウンター席のある部分はイベントスペースがあり、「楽市楽座」と名づけたイベントが行われる。金沢以北の13市町が協力し、交替で催しを企画する。私が乗ったときは「和菓子づくり体験」が開催された。丸い練り切りに串で形を作っていくと梅の花になる。なるほど、こんな風に作るんだなあ。このほか「地酒の試飲会」「津幡町の今昔語り」などがある。