政界という場所には、結婚や出産、子育てに悩む世代と異なる感覚や価値観を持ったセンセイたちがいらっしゃる。個人や家族の事情を国家の都合でしか解釈できず、上から目線でセピア色の持論を説きたがる「昭和おじさん」が少なくない。選挙が始まると、彼らは街にやってくる。普段は接することのない、地べたで暮らす人々の前に立った瞬間、その地金は露呈する。
なかでも、この参院選の大きな争点となっている社会保障問題は、「昭和おじさん」にとっての鬼門だ。今回も自民党三重県連の会長を務める国会議員(68)がやってくれた。マイクを握りながら「(応援する女性現職にとって)6年間の一番大きな功績はですねぇ、子どもをつくったこと」と言い出したのだ。
私はその報道を知って、「これぞ自民党だ」と思った。
自民党の「昭和おじさん」とは一線を画する発言
一方、小泉進次郎は今回の全国行脚で「自民党らしくない発言」を続けている。
「(会場には)赤ちゃん連れの方も多く来ています。これから出生率を上げようかと目標を立てていますが、私は必要ないと思う。これよりもやらなきゃいけないことは、産みたい、子どもを育てたい、そういう人たちの希望が叶うお金の使い方、政策の進め方。だから、今年の10月に消費税が10%になって、幼児教育・保育の無償化が始まる。3歳から5歳、無料。それは第一歩にすぎません。
子どもを預けたい時に預けられる。そういうことを、将来への投資をどんどんしなければならない。そして、産むか、子どもを育てるかは、そういう判断も国が押し付けるのではなくて、国民一人ひとりの選択がしやすい社会をつくっていく。出生率の目標を立てても人口は増えないんだから、だったら増えないことに嘆かない国づくりをする時代なんです」
出生率に基づいた少子化対策を否定する。この姿勢は小泉の持論に過ぎず、「昭和おじさん」が幅を利かせている自民党の方針ではない。
かつては「独身だから」と逃げていた
だが、次の遊説先への移動中、周囲にこうも漏らしていた。
「今の社会のあり方とは違う発言が党の中からポロポロ出ている。なんか、時代の変化、若い世代、現役世代の感覚とのズレが相当ある。そこの発想を変えていくといろんな政策の発想が変わってきますよ。『そうではない!』と言い続けたら、やがて変わりますよ」
そんな小泉も国会議員になってから10年を迎えようとしているが、勇気をもって「そうではない!」と言い出したのは5年ぐらい前。それまでは「結婚して子どもを持ってこそ一人前」と考える昭和おじさんに囲まれながら空気を読み、いつもこうして「鬼門」を避けようとしていた。
「子育てとか、少子化対策とか、それは小泉進次郎にはできないんです。独身だから。言っても説得力がないから」(2012年12月9日、埼玉県朝霞市での演説より)