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「一番大きな功績は出産」発言の対極にいる小泉進次郎は「普通の人々」の味方なのか

「昭和おじさん」とは一線を画しつつも、発言から「私」が消えている――ルポ参院選2019 #4

2019/07/17
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一度も出てこない「パート」「フリーター」「非正規雇用者」

「国民年金だけの人たちにも、より手厚い厚生年金に入れるようにする。国民年金だけの人が将来的に無年金、低年金にならないような社会をつくる」

 小泉はこう唱える。だが、10月の消費税増税を前に休廃業を検討する事業者が相次ぐ時世に、厚生年金保険料の新たな負担増に耐えうる元気な中小企業は全国にどれだけあると思っているのか。そこでも必要となる予算はどこから持ってくるのか。演説を聞いただけではさっぱりわからない。

 しかも、小泉が救済の対象として口にするのは、もっぱら第一次産業従事者と個人事業主。「パート」、「フリーター」、「非正規雇用者」という言葉はこれまで一度も出てきていない。

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 小泉自身も属する氷河期世代には、非正規雇用者が317万人、フリーターが52万人、職探しをしていない人が40万人もいるという。その数は他の世代よりも多い。改革の後からやってくる「痛み」は小泉構造改革で懲りているし、選挙の後に「財源がなかった」と開き直られるという「悪夢」を民主党政権時代に見てきた人たちだ。

「改革者」の顔をして東京からおらが街にやってきた人気政治家に我先と握手を求め、携帯電話で一緒に記念写真を撮ろうと殺到する人々の熱狂ぶりを全国各地で毎日眺めていると、平成政治の苦い記憶が蘇ってくる。

一方通行の演説に徹し、聴衆の疑問には答えない

 小泉は自らを好意的に報じる一部メディアのインタビューに応じるが、討論番組には一切登場しない。選挙応援においても「街頭演説」という一方通行のスタイルに徹し、聴衆の疑問に答えるようなことはしない。街頭演説に来ない人や来られない人への想像力を失わないように気を付けないと、経験豊かなジャーナリストでさえも耳触りのいい小泉の言葉にメロメロに酔わされ、持ち前の批判精神を忘れてしまう。

 小泉は改革の必要性を唱える際、よく「嘆いたってしょうがない」と強調し、未来を語りたがる。だが、「嘆いて嘆いてしょうがない毎日」を送っているのが、中年を迎えた浮かばれない同世代の日常だ。やっとのことで今日を過ごす彼らには、平日の昼間に行われる街頭演説会に顔を出す余裕なんて許されていない。政治家にモノが言える手段は、せいぜいスマホくらいだろう。

 

 小泉はネット上で蠢く自らへの批判を取り上げ、こう唱えることがあった。