「仕事と家庭を両立するのが当たり前」世代の選挙戦
全国の昭和おじさんが名を連ねる集団の中で厚生労働部会長を務めている小泉は、参院選が公示された7月4日から各選挙区を応援行脚している。中盤戦を終えた15日までの12日間で、通算48か所の演説会場に立った。彼と同世代の私はその言動を追いかける中、のっぴきならない事情が生じた。担当編集者Iクンの家に、第3子が誕生したのである。
加えて、文春オンライン編集部は、休日動いていない。一昔前であれば、担当者との「阿吽の呼吸」で素材の熱が冷めないうちに土日返上で編集作業を進めたものだったが、今回はそうもいかない。昨今の「働き方改革」も影響し、ジャーナリズムの現場も大きな転機を迎えている。
私自身も全国各地を飛び回る間、家事や育児をする時間を確保している。今回は「完全密着」をあえてやめ、家族の送り迎えをこなしながら地方で行われる街頭演説の現場に出向いている。この選挙戦中には、我が子が生まれて初めて「おまるでうんち」ができた瞬間にも立ち会うことができた。
そんな些細な喜びが得られたのも、似た境遇にあるIクンのおかげでもある。こんにちの男たるもの、仕事と家庭を両立するのが当たり前――だと思って、古めかしい出版社の都合を押し付けようとしない。そんなふうに肩を寄せ合って、なんとか今日も密着取材ができている。
今回ほど小泉の背中が「遠い」と感じたことはない
われわれ世代の多くは「老後はまだ先の話」と思っていたが、良くも悪くも「2000万円」という具体的な数字が示されたことで初めて当事者意識を持たざるを得なくなった。小泉は全国遊説のすべての会場で年金の話題を取り上げ続けている。
「私は全国を回っていて、特に飛行機に乗っている時に好きでよくやること。それは日本の山の景色を見ることです。なかには、こんなところに一軒家が。あのどっかのテレビ番組みたいに(笑)。そういうところを見つけた時にこういうことを考えます。あの山の中の一軒家に政治ができることってなんだろうか、と。
こんな市街地だといろんなことが考えられる。政治の影響って結構あると思う。だけど、山あいの集落に、あの一軒家に届くことってなんだろう。私は考えていて、見つけた答えは年金です。年金を含めた社会保障は市街地に住んでいようが、東京だろうが、北海道だろうが、沖縄だろうが、山の中の一軒家だろうが、どこに住んでいる人にもそのサービスを届けなければいけない」(7月12日、北海道旭川市での演説より)
私は2010年の参院選以降、通算7回の大型国政選挙で、小泉進次郎の全国遊説を追いかけ続けてきた。だが、今回ほど小泉の背中が「遠い」と感じたことはなかった。何が私にそう感じさせるのか。