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「忖度」発言で苦戦が伝えられている候補者の応援で

 ようやく1000人以上の大台に乗るような大群衆を目にすることができたのは、同じく7月14日の昼間に新潟駅南口で行われた演説会だった。

 小泉は街宣車の上に立って挨拶を終えると、昨晩、自宅の冷房が壊れたせいで寝室が水浸しになったという個人的な話を持ち出した。「私、何を話してんですかね?」と自分で突っ込みを入れながら、こう続ける。

「誰にでも失敗はある」

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 新潟は「忖度」発言で苦戦が伝えられている自民党の現職候補が立っている1人区。小泉はその問題にあえて触れることで「今の選挙の空気を変えなくちゃいけない」と訴えた。

 

 そして、こんな考えを口にした。

「今の安倍総理は2回目の総理。今から10年以上前に総理大臣をやっていました。1回目、1年で辞めざるをえないことになりました。2回目、安定政権を築いた。もし日本が一度、徹底的に叩かれた人には二度とチャンスを与えないという社会だったら、今の政治の安定はない。私は何度もチャレンジできる社会をつくっていきたいと考えている」

 小泉進次郎という政治家は、2018年9月に行われた総裁選では安倍晋三ではなく、石破茂に票を投じた。当時はその理由を「違う意見を押さえつけるのではなく、違う声を強みに変えていく自民党でなければいけない」と語っていた。それから1年も経たないうちに、こんどは大聴衆に向け、安倍のことを評価し始めた。

 

国政選挙のたびに安倍との二枚看板で「党の顔」に

 そういえば、前日にテレビ局の直撃取材を受けた際にも、「同じ人物が2度目も総理になれるということは、安倍政権がつくったレガシーですよ」とも持ち上げていた。私は聞き耳を立てながら、別人なんじゃないかと疑った。

 そのことだけで、日和見だとか、変節漢とか、言うつもりはない。人気者といえども、永田町という嫉妬の海を泳ぎ続けることは容易じゃない。それに、彼からこう聞かされ、納得したことがある。

「周りから面倒くさい存在だと思われてもいいけど、『はねっかえり』にはなってはいけない」

 ただし、それでは安倍自民党の「勝利の方程式」も狂ってしまう。野党の演説と聞き間違えるほど、身内の大物を突き上げ、党全体に自省を呼びかけ、独自の政治判断を貫いては、国民から喝采を浴びる。それが彼の持ち味だった。厄介な異端児を党勢回復のためにしたたかに活用してきたのが安倍自民党だ。

 

 野党時代の2012年に安倍が総裁に復帰して以降、小泉は国政選挙のたびに安倍との二枚看板で「党の顔」に仕立て上げられた。たとえ公然と安倍を批判するパフォーマンスをしても、党はオトナの判断で小泉を活用する戦略を変えなかった。イデオロギー色の濃い安倍を苦手とする分厚い無党派層を抱き込めるような「オールラウンダー」は、今のところ彼だけだからだ。

 だが、小泉が日和ってしまえば、自民党から逃げていく人々も少なくない。実際、新潟での発言が報じられると、ツイッターでの反応は暗転した。「つぶやき感情分析」を見ていると、「進次郎」というキーワードに対し、ネガティブマークが多数を占め、「大嫌い」「騙す」「クズ」という関連ワードが表示されるような状態が続く。