「来春に貴国を訪問するのはいいアイデアだ」
6月28日から29日にかけて大阪で行われた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて来日した中国の習近平国家主席は同27日、安倍晋三首相と会談し、「来年の桜の咲くころに習主席を国賓として迎え、日中関係を次の高みに引き上げていきたい」と要請した安倍首相に対して、こう答えた。これが宮内庁内で懸念を生んでいるという。
平成最初の国賓はジンバブエ大統領、2人目はタンザニア大統領
宮内庁関係者が語る。
「天皇陛下は令和の御代となって最初の国賓として、5月25日から28日の日程でアメリカのトランプ大統領を迎え、宮中晩餐会で歓迎されました。国賓の招聘は予算の関係もあり、大方、1つの年度に2回程度という不文律があります。『桜の咲くころ』となると今年度の最後か来年度の初めということになるでしょうけれども、そうなると天皇陛下が即位後に迎えられる国賓は、世界の経済大国第1位と第2位ということになる可能性があります。
上皇陛下は平成の御代、天皇として政治とは一定の距離を置き、国の大小で扱いを変えないことを徹底されてきました。上皇陛下が最初に国賓として迎えられたのは即位された年の10月、アフリカのジンバブエの大統領です。2人目もアフリカのタンザニアの大統領。あまりにも違いがありすぎるのです」
旧民主党政権と安倍政権は「似た者同士」?
旧民主党政権は2009年12月15日、まだ国家副主席だった習氏と天皇だった上皇陛下との面会を強行し、「天皇の政治利用だ」との批判を浴びた。宮内庁は上皇陛下の体調への負担と相手国への公平性の観点から、外国要人との会見は1カ月前までに打診するよう外務省に求めていたが、この時の打診は1カ月を切った11月26日だったからだ。
習氏は当時、すでに次期国家主席と目されていたため、官邸側からは12月7日と10日に「首相の指示。日中関係の重要性にかんがみて」と強い要請があり、面会は実現したが、当時の羽毛田信吾宮内庁長官は急遽、マスコミに対する説明の場を設け、憲法下の象徴天皇のあり方にかかわる問題とする懸念を表明した経緯がある。
安倍首相はこれまで、旧民主党政権を「悪夢」と揶揄してきたが、天皇の政治利用という点では旧民主党政権と安倍政権は「似た者同士」といえるのではないだろうか。