放心状態になった我々に、お母さんはわんこそばのようにわんこマンゴーを渡してくる。「腹いっぱいマンゴー食べたいんじゃー!」と思ってはいたが、本当にマンゴーで腹を満たせるとは思ってもみなかった。しかも台湾最高峰の愛文マンゴーで。
マンゴーを満腹になるまで食べると、腹がぷわーっと変な膨らみ方をする。膨らみ切った腹をお母さんに「2人妊娠してるわよー!」と笑われながら、更に3人目のマンゴーを与え続けられる。なんて贅沢な苦しみだろう。「お母さ……ちょま! これ以上は無理!」と全員がギブアップすると、やっとマンゴーを差し出す手が止まった。マンゴー農家の迎撃ぱねぇ。
“マンゴー狩り”が存在しない真相
無限マンゴーが落ち着いたところで、次はマンゴー農園を案内してくれた。そこで私たちは、なぜ台湾でマンゴー狩りが見つからなかったのか一目で理解する。
畑に出ると、マンゴーが紙で包まれた風景が広がっていた。台湾マンゴーの父・鄭罕池さんが台湾でアップルマンゴーの栽培を成功させた秘訣は、この紙袋で包む手法である。紙袋越しにどのマンゴーが熟しているのかなんて素人目には分からない。そりゃあ観光農園としてのマンゴー狩りが成立しないわけだ。
しかしプロの目には一目瞭然。お母さんは紙袋越しに薄っすら見える色で熟れ具合を判断し、紙袋をつけたままサクサク捥(も)いでいく。
別れ際、お母さんとお父さん、ホウキン君、お姉ちゃん、弟君の一家総出で見送ってくれた。突然訪れた見ず知らずの外国人に「また来てね!」と言ってくれる。なんて懐の広い人たちなんだろう。ここに至るまでの苦労など、皆さんのおかげですっかり打ち消された。連絡先を交換し、マンゴー汁でベッタベタになった顔で「来年も来るねー!」と手を振った。