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「潮風に当たるとボクは元気になる」人口200人の離島で進次郎が久しぶりの笑顔を見せた

選挙戦は「不慣れな猟官運動」だったのか――ルポ参院選2019 #7

2019/07/20

なぜあえて人口200人の離島を選んだのだろうか

 今回、ようやく小泉の明るい笑顔を見られたのは、最終盤の18日だった。

 

 その日、小泉はこの選挙で2度目(3日目)となる山形入りをした。彼が選んだ遊説先は、日本海に浮かぶ山形県の離島、飛島(人口約200人)。6年前の参院選で、「1日1島」の離島巡りをテーマに全国を行脚した時以来の再訪である。

 この参院選で最も熾烈な激戦区の1つとなった山形において、しかも陣営からすれば大都市の無党派層向けのてこ入れをしてほしい残り3日の時点で、なぜあえて過疎地を選んだのだろうか。

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 島に向かうため、チャーターした小型漁船に乗り込む直前、小泉は繁忙期を迎えた牡蠣漁師らを前にした演説でこう語った。

「きっと、山形県が地元じゃない国会議員の中で飛島に2度も行ったのは、おそらく私1人。しかも選挙期間中に。でも、人に言われます。何で大きな町の市街地のど真ん中で何百人も集めてやらないで、200人のところに行くんだと。私からすると『そうじゃない!』。『飛島に行くほどの激戦』なんです。だから、山形県内には総理も官房長官も入っていますよ。いろんな方が応援に入っている。だけど、誰も応援に入っていないのが飛島。そして、今いる吹浦。これからの日本、他人が行かないところ、他人がやらないところ、そういうことで頑張ることに、意味がある」

 山形県遊佐町にある吹浦という小さな漁港には300人近い人が集まった。11時半頃に小泉が現れるまで、小さな漁師町の人々は「どうしてこんな辺鄙なところを選んだんだべ」と一様に首をかしげていたが、地元のマスコミ関係者らは、政治的な集会にめったに顔を出さないというムラの若手たちが勢揃いした光景に驚いていた。

 

「こないだ近くであった自民党の集会に野田聖子が来た時より人が集まっているよ」(地元の新聞記者)

「疲れ切っている時、潮風に当たるとボクは元気になる」

 鄙びた船着き場に集まったこれだけの賑わいを見て、小泉も安堵したのだろう。何かが吹っ切れたような表情で漁船に乗り込むと、約1時間かけてとびうお漁で有名な離れ小島を目指した。

 

「どうして島に行くって。島に行きたいと思ったから。好きとしか言えない。それで、山形選挙区に入るならば、飛島に行こうと思ったんです。山か海か、どっちが好きかと言ったら断然、海。横須賀で海に囲まれて育ってきたから。疲れ切っている時、潮風に当たるとボクは元気になる」

 小泉はそうつぶやく。