令和に入って初めての大型国政選挙となった今回、小泉進次郎は17日間の選挙戦中、全国17の選挙区を応援に回った。北海道、秋田、岩手、宮城、山形、福島、茨城、神奈川、新潟、長野、三重、滋賀、香川、愛媛、大分、佐賀、長崎。地元の神奈川、複数区の茨城と北海道、そして自民党現職が優勢の佐賀を除けば、いずれも自民党候補が苦戦を強いられた激戦の1人区である。

 だが、応援の密度はこれまでと大きく異なった。3年前の前回の参院選は1日長い18日間だったが、あわせて21の選挙区に入った。最後の3日間だけで20か所の街頭に立った。それが今回のラストスパートは9か所と、前回の半分以下にとどまった。

 

「小泉が入りたくないと言っている選挙区」の噂

 公示される1か月ほど前、小泉は自らに近い現職候補の決起集会でスピーチした際、こんなことを述べていた。

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「この夏の参院選では全国を回ることになりますが、私が応援する方の中にもいろんなタイプがあります。応援に行けと言われて行く人か、状況が厳しいから行かなきゃいけない人か、行かなくても大丈夫だけど私から『行かせてくれ』と言って行く人か」

 同じ頃、永田町では「小泉が入りたくないと言っている選挙区」がまことしやかに語られ、党内では物議を醸した。結局、小泉はその選挙区に入らなかったので、噂は間違っていなかったようだ。党本部も彼を気遣ったのだろう。

 

 一方で、候補者本人と揃い踏みする会場は少なかった。

「今日、私は県内を何か所も回っているけど、○○さんとは一度も会いません。それでいいんです」

 小泉は自虐的な振りで、聴衆の笑いを誘う。劣勢に立たされた選挙区では、候補者がいようがいまいが、本人の弱点や悪評を大勢の前であえて取り沙汰した。これは高度な応援技術なのか、受け狙いなのかよくわからない演説が目立った。

「Who are you?」という疑問が残ったまま

 最も残念だったのは、自ら「全国行脚のテーマ」として掲げた年金問題のことである。小泉は遊説を丸1日休んだ7月16日以降、その問題に一切触れなくなった。

 たしかに、選挙も終盤戦に入れば、個別の政策を訴えている場合ではない。だが、小泉は公示直前にあるネットメディアに仕掛け、厚生労働部会長として進めてきた社会保障改革の詳細を拡散させるまでして、周到に「見せ場」を整えてきたはずだ。

 本連載でも小泉が社会保障を考える視座に着目し、遊説を通じた国民との対話の中で彼の構想が日に日に磨かれていくものかと期待していただけに、少々面食らった。