「オワはいったい何時、勉強していたのかしら」
子どもの自主性を尊重しながら「教育」するには忍耐がいる。放任するのはたやすいが、時に道をさし示しながらしっかりと見守りつづけることは、より多くの我慢強さを求められることが多い。優美子さんが周囲に語っていた「常に緊張して歩いてきた」という言葉のなかには、子どもの教育に対する正直さとひたむきさが感じられる。
そんな教育方針のなかで雅子さまも自分の体調に合わせて自然と早起きをして勉強することが習慣になっていたという。当然、宿題だけではなく予習や復習もし、ソフトボールの朝の練習にも参加した。
担任教師は当時のことを印象深く憶えている。
「小和田さんは成績こそ良かったのですが、いわゆるガリ勉ではありませんでした。学校生活を楽しんでいるといった感じで実にのびのびとしていました。いつも女子生徒たちのなかで微笑んでいたのが印象的です。女子生徒に特有の大声ではしゃぐといった感情的な面はなく穏やかで冷静でした。最近会った当時の生徒たちも『オワはいったい何時、勉強していたのかしら』と話していました。頑張っている姿をそんなに見せずに軽くこなしていくという品の良さがありましたね」
「一人ひとりの目を見て笑顔で話しかけてくれる」
中学時代からのある同級生は今でも雅子妃と交流がつづく大親友の一人だが、同様の印象を持っている。
「学業とスポーツを両立されて何をやってもお出来になったのに、常に謙虚でいらっしゃいました。授業中でも積極的に手を上げてご発言されることはほとんどありませんでしたが、先生に指されると的確な答え方をされる。友人同士で話をしていても、とてもにこやかにされていましたが、どちらかというと聞き役でいらっしゃった。クラスでも人気があって、いつも周りに人が集まるような人望もありましたが、ご自分のことが話題の中心になるとはにかまれて、話題を変えてしまうようなことがありました。繊細というよりも、もの静かで穏やかなご性格だったのではないかと思います。
妃殿下は世間で言われているような活発で勝気なイメージとは違う方なので、実際にお会いしたらおそらく驚かれると思います」
別のクラスメートも同じように話す。
「クラスの中で特に目立つということはありませんでしたが、友人からはとても頼りにされる存在でした。先生との受け答えから頭がよくて勉強が出来るという印象はありましたが、飛びぬけて出来たというわけではなかったと思います。聡明で、どちらかといえば、周囲に気を使われすぎてしまうようなところがあって、同窓会で皆が寄ってきても、一人ひとりの目を見て笑顔で話しかけてくれるようなそんなやさしさがありました」