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鐘鳴るバンクで豪脚が鎬を削り合う・競輪

「ヨーロッパは無理だわ!」

 そんな隠語が競輪には存在する。ヨーロッパとは、4-6-8の決着を意味する符牒。レースにどの選手をどの枠順で出場させるのかを決める権利を持つ“番組屋”が、相対的に実力の低い選手を入れる車番が4、6、8ということで、そうした符牒が生まれた。

©大小田陽平

 競輪の払戻ランキングを見てみると、競艇に比べて金額は一気に跳ね上がる。1位に輝いたのは、2006年9月21日に奈良競輪場で記録された4,760,700円。競艇の7倍弱の金額だ。これは、競輪が競艇よりも出走する車(艇)の数が多いという単純な原因による跳ね上がりだろう。

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 競輪は(モーニング・ミッドナイト・ガールズ開催を除いて)9車で順位を競い合う競技。つまり、競艇では最大120通りだった三連単の組み合わせが最大504通りにもなる。

「バンク」と呼ばれる楕円形のコースを周回する競輪

 ちなみに、歴代1位の払戻を記録したレースも8-4-5の決着。“ヨーロッパ”でこそないが、8も4も絡んだ決着ゆえの配当だった。

 なお、4、6、8に実力の低い選手が入るのは、かつて車券が手売りだった頃、強い選手と弱い選手を互い違いにすることで、枠連という券種の発売窓口混雑を緩和するためだったという由来がある。のだが、そうした由来について書いていると、いくらWebページだといっても紙幅が足りない事態になってしまいかねない……次のランキングに移ろう。

一体となってターフを駆け抜ける人馬の競走・競馬

 日本の公営ギャンブルの中で、1985年以降トップの売上を記録し続ける競馬の払戻はどうだろうか。

 競馬は最大18頭で行われる競走で、(歴史上さまざまな馬券が発売されてきたが)現在は単勝、複勝、枠連、枠単、馬連、馬単、ワイド、三連複、三連単の券種が存在する。競馬においても、最も的中が困難で、それだけ払戻額が大きな券種は三連単だ。早速ランキングを見ていこう。

©大小田陽平

 ついに老後に必要とされる資金2000万円を確保できるほどの払戻額がランク入り! 三連単29,832,950円という驚異的な金額だ。

 歴代最高の払戻を記録したこの結果は“新馬戦”で記録された。驚くことに2、3着は同着(2着、3着を区別できないほどの着差ゆえに、いずれの馬も2、3着として、本来1通りにしか支払われない配当が2通り払い戻される。つまり、本来1→2→3の決着も金額が分配されて1→2→2'と1→2'→2に支払われる)だった。もしも2、3着がはっきりした着差であれば、それは途轍もない払戻額だったことだろう。いや、同着であれ、途轍もない払戻額ではあるのだが……。

最大18頭で争われる競馬は、それだけ的中が難しくなる ©文藝春秋

 ついでながら、このレースを勝った馬ミナレットは、その後も波乱の立役者として活躍した。2019年7月現在、歴代7位の払戻である三連単20,705,810円もミナレット絡みのレースである。18頭中18番人気(単勝人気291.8倍)という支持のなか猛然と逃げ粘り、3着に食い込んだ。ミナレットはその馬生において、何度も本命党を泣かせ、大穴党を喜ばせてきたのだ。