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激アツ「蘭州ラーメン」ブーム――でも東京で本格店が増えない「ただ1つの理由」

激アツ「蘭州ラーメン」ブーム――でも東京で本格店が増えない「ただ1つの理由」

西川口の人気店「ザムザムの泉」で聞いた

2019/07/30
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中国B級グルメのなかでも日本人にピッタリ

「蘭州ラーメン」はなぜこれほどまでに人気となったのか? 蘭州牛肉麺にドハマりし、本場の蘭州市まで押しかけたばかりか、日本全国の店を回っているというツイッターユーザー、“日本一の蘭州牛肉麺オタク”こと中国住みさん(ハンドルネーム)にその理由を尋ねた。

「私は2000年代半ばに中国北部の大連に駐在していたのですが、自宅の近くに蘭州ラーメンの店があって。中国B級グルメのなかでも、日本人の味覚に合う料理だと感激しました。あっさりしているけど奥が深い複雑な味なんです。そんな日本人にピッタリの味が受けたのかなと思ってます」

 帰国後も中国に通っては蘭州牛肉麺を食べていたという中国住みさん、日本国内でも食べられるようになった今を喜んでいる。

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満席のため、店の前には行列が出来ることも

「ただ、店が増えたといってもほとんどは中国で言うところの『青海系の蘭州ラーメン』のようなもので、『蘭州系の蘭州牛肉麺』はほとんどないですよね。ご存知でしたか? 蘭州には『蘭州ラーメン』はないんですよ」

「蘭州牛肉麺」と「蘭州ラーメン」は違うもの

 なんだか謎かけのような言葉だが、その意味を説明しよう。甘粛省蘭州市の伝統的な軽食が「蘭州牛肉麺」。17世紀初頭にはレストランがあったとの記録があり、同地の回族が300年以上も守り続けてきた。こちらが蘭州系となる。

 もう一方の青海系は1988年発祥とまだ30年の歴史しかない。馬貴福という男が福建省アモイ市に開いたレストランが発祥だという。馬貴福の出身地である青海省海東市化隆回族自治県は中国屈指の貧困県だ。同郷の人々は馬の料理とノウハウを学び、中国全土でその麺料理を提供するようになった。その際に有名な「蘭州牛肉麺」の名を借りて、「蘭州ラーメン」を名乗るようになった。歴史が浅い青海系だが、店舗数では圧倒的に多い。中国人でも両者の違いを知らず、蘭州の料理だと勘違いしながら青海系を食べている人も多いという。

スッキリとした薬膳系のスープ

“日本一の蘭州牛肉麺オタク”の選ぶベスト3

「私が初めて食べて感激したのも青海系ですし、蘭州系でもまずいところはありますよ。ただ青海系は気軽に出店、気軽に閉店を繰り返すフットワークの軽さが売りなんで、味がちゃんとしてないところが多いような気はします」と中国住みさん。

 日本にはまだ蘭州牛肉麺が上陸したばかりということもあって、まずは伝統の蘭州系を中心にオススメしているという。そんな“日本一の蘭州牛肉麺オタク”のオススメは以下の3店舗。

「川口市のザムザムの泉、神保町の馬子禄牛肉面、大阪・難波の周記蘭州牛肉面。この3店舗をオススメします。いずれも丁寧に作ったスープと独特の味わいのある手打ち麺が魅力です」