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「喚きながら走った」ものすごいスピードで舞い上がったUFO

 次に気がついた時、私はアスファルトの上に横たわっていた。冷気を感じた。10メートル先の路上にUFOが光っており、それはアッという間に、ものすごいスピードで夜空に舞い上がって行った。音は全然聞こえなかった。

UFOから解放されたトラビス(すべてトラビスと筆者の合作になるもの) ©文藝春秋

 闇に包まれて、あたりを見回すと、遠くにヒーバーらしい明りが見えた。とたんに恐怖に襲われ、私は喚きながら走った。どこをどう走ったのか、とにかく村はずれのガソリン・スタンドにたどり着いたのが真夜中だったのだろう。義兄に電話したが興奮していたので何を喋ったろうか。義兄は最初のうち、私を誰だかわからないようだった。彼らに助けられ、6日間も行方不明、と聞かされてびっくりした。1、2時間ほどのこととしか覚えていなかったからだった。

 落ち着いてからも頭と胸が痛く、吐き気がした。体重が5キロも減っていた。身体の具合が悪くなったのではないか、とすごく心配だったが、スチュアード博士のところに行ったら、催眠術をかけるというので、話が違うと帰ってきてしまった。

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 私が昔からUFOマニアだったという人がいるが、全然そんなことはない。テレビを持っていないから、CBSが放送したというUFOの番組も知らないのだ。もちろん今ではUFOに興味をもっており、これからは謎の解明のために協力するつもりでいる。

「その部屋には変な生物がいたか?」「イエス」

 年が明けて2月7日、APROがトラビスの回復を待って行なったポリグラフ・テストは、次のようなものであった(テストはフェニックスのイーゼル・ポリグラフ研究所、ファイファー技師によった)。

「11月5日以前、あなたはUFOマニアだったか?」
「ノー」

「11月1日以降、なにか麻薬を服用したか?」
「ノー」

「APROに真実を話したか?」
「イエス」

「11月5日夕方、青緑色の光線に打たれたか?」
「どんな光線かはわからないが、何かに打たれて倒れた。仲間は青緑色の光線だと言っている」

「UFO内の記憶は2時間くらいか?」
「イエス」

「変な部屋のテーブルに寝かされたことがある?」
「イエス」

「その部屋には変な生物がいたか?」
「イエス」

「他人と共謀してこの話をデッチアゲたのか?」
「ノー」

「体験を正確に話したか?」
「イエス」

©iStock.com

 この日、兄のデュエインもテストをうけ、パスした。APROはこの結果をマスコミ関係者に通報したが、トラビス事件についての関心は冷め切っており、アリゾナでは全く報道されずに終ってしまった。