1983年にテレビの仕事で来日する前、じつは学生時代にデーブさんは日本に留学していました。そもそもデーブさんが日本に興味を持ったのは11歳のとき、転校生が持ってきた『少年サンデー』と『少年マガジン』がきっかけだったそう。聞き手は演劇史研究者の笹山敬輔さんです。(全3回の2回目/#1、#3へ)
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『巨人の星』はボールがお餅みたいに伸びるのがおかしくて
―― シカゴに生まれたデーブさんが日本と出会ったのは11歳のとき、転校生のワタル君にマンガ雑誌を見せてもらったのがきっかけなんですよね。
デーブ そうそう。『週刊少年サンデー』と『週刊少年マガジン』ね。
―― 初めて日本の雑誌を見たときのことを覚えてますか?
デーブ 色が少ないなって思った。1色しかないもん。あとすごく分厚い。アメリカのコミックは4色カラーで、丸めてジーンズのポケットに入れられるくらい薄いんです。日本のマンガ雑誌みたいにたくさんのマンガが載ってなくて、『スパイダーマン』や『スーパーマン』みたいに1冊に一つの作品だけ。
―― たしかに形状からして違いますよね。好きな作品は何でしたか?
デーブ 『巨人の星』と『伊賀の影丸』と『おそ松くん』の三つです。『巨人の星』は、野球のボールがお餅みたいに伸びるのがおかしかった。あと、擬音も多いよね。
―― そのころは、まだ日本語が読めなかった?
デーブ 読めない。だから、カタカナから少しずつ覚えていきました。最初は、『めばえ』と『よいこ』と『小学一年生』から。日本のマンガは、セリフにルビが振ってあって、日本語教材にいいんですよ。
シカゴにある日本の本を扱う雑貨店に通った
―― 今でこそ日本のマンガ・アニメの「オタク」がアメリカにも増えてますが、当時は珍しいですよね。マンガもなかなか手に入らなかったんじゃないですか?
デーブ 人からもらったんですよ。マンガは貴重なものだったから、コレクションしてました。今はネットで何でも手に入るけど、当時は船便で取り寄せるんです。海外の日本人が『文藝春秋』を読もうとするときなんか、わざわざ取り寄せて、みんなで回し読み。1冊の本をありがたがって読むんです。
―― シカゴにある日本の本を扱う雑貨店にも頻繁に通ったそうですね?
デーブ 日本の芸能界が好きだったから、『平凡』と『明星』なんかにハマりました。あと、『PocketパンチOh!』もよかったね。知らないでしょ?
―― 初めて聞きました。そんな雑誌があったんですね。その雑貨店が、「東京ローズ」の店だったというのは本当ですか?
デーブ そうそう。僕は親しかったんですよ。
―― 太平洋戦争中の日本軍は、連合国軍の兵士へ向けたプロパガンダ放送を行っていて、そのときの女性アナウンサーたちが「東京ローズ」と呼ばれていました。そのうちの一人であるアイバ・戸栗・ダキノは、アメリカに帰国後、国家反逆罪で有罪判決を受けています。
デーブ 彼女は、家族が経営してる「トグリ」という名前の店で働いてました。すごく親切で、面白くてサバサバした人でした。最初は裏切りとか売国っていう悪評があったけど、本当は違うんですよね。