愛する友人に朝吹真理子さんがいる。これまた愛する友人アーバンママとの食事会で出会い、真理子氏(なぜか私は古のオタクよろしく真理子氏と呼んでいる……)に「あ!そのパンツmame(ブランド名)だ!かわいい!」と話しかけてそこからなんだか仲良くなった。帰り道私の本の感想も話してくれた。江戸時代の風俗についてしたためた何かのようだと譬え褒めてもらったのに、私にはその江戸時代の何かがわからないままだったけど。その後一緒に公園で夕日を見たり、中華を食べたり、たこ焼きを食べたり、どじょうすくいを習いに行こうと鼻息荒くしたり、LINEで私がエロい妄想やイラストを送りつけたりするようになった。友人にエロい妄想を送りつけるなんて初めてだったので最初恥ずかしかったけど、受け止めてもらっている。これを友人と呼ばずしてなんと呼ぶんだろう。

©犬山紙子

 そんな愛する真理子氏が書いたエッセイ集『抽斗のなかの海』は発売されてすぐゲットした。全く知らない人の書いたものは素面で読めるけど、友人のエッセイは「読んでいいのかな」ってちょっとドキドキする。友人のノートを勝手に見ているようなときめきだ。

 鉱物が大好きで口に含んでは怒られ、とりわけ愛する雲母を齧り舌先を切ってしまっていた真理子氏。美しいエピソードに聞こえるが、砕けた雲母のちくちくを夕食のなめこの味噌汁をガブ飲みすることでどうにかしようとしているあたり本当に愛おしい。私も子どもの頃キラキラした石(墓場に落ちてたやつ……)を口に含んだことを思い出した。子どもはお気に入りを口に含みたいという欲があるのかもしれない。好きなものと同化できるかもしれないという期待があるんだろうか。

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 学生時代から焦がれていた大江健三郎さんに会った直後失神してしまう真理子氏、一緒にいるときは勿体無い根性で意識を踏ん張っていたのも愛おしい。ヘソのゴマが気になって竹串で刺してしまい化膿、それを夫に言い出せずにいる真理子氏も愛おしい(竹串て)。春になると憂鬱で一円ハゲができ、それを合わせ鏡で見る真理子氏には思わず生き霊飛ばして抱きしめに行った。春を何度も乗り越えた愛しい真理子氏。私は感情が昂ぶってそのエピソードを漫画にしたりした。

 そして江戸にハマり、江戸の人々の心に近づこうとしたエピソードに『耳袋』が登場した。あ、そうか多分私の作品は『耳袋』のようだったと言ってくれたのかなと思う。答え合わせはしようと思えばできるのだけど、これも何かの縁。『耳袋』を読んでみようかなと思った。