怒りの全容を把握してプラスの力に
“怒りのレスキューツールマップ”も効果的だという。中村氏が取り出した紙には、薄水色から赤色がグラデーションになった帯が描かれている。
「薄水色が怒りレベル0%で、赤色になるほど怒りが100%へと高まっていくイメージです。過去に怒りを感じたときに無意識にした行為を思い出し、この帯にリストアップしていくんです。例えば、少しイライラしたときには煙草を吸うなぁと思い当たるなら、怒り10%くらいのところに《煙草を吸う》と書きこむ。怒り心頭だったあの時は酒を浴びるように飲んだなという記憶があれば、80%くらいのところに《記憶を失うまで酒を飲む》と書く」
書き込んでいくうちに、自分の“怒りサイン”を整理することができるのだ。このサインが出れば「自分の怒りはいま何%くらいだな」と、意識できるようになる。
「これらのワークに共通するのは“無意識を意識すること”。怒りの怖さは、気づかないうちに怒りが怒りを呼び、いつしかそこから抜け出せなくなってしまうことなんです。視野狭窄が起きて怒りの対象以外目に入らなくなってしまうため、“怒っている自分”がおいてけぼりになり、自分が何に対してなぜ怒っていて、怒りによって何を発散しようとしているのかを見失ってしまう。しかし怒りという感情を意識できれば、冷静に対処できるようになる」
怒りの全容を把握できれば「憎しみや怒りはポジティブなエネルギーにベクトルを変えることができる」という。
「怒りのエネルギーは無限に大きくなっていくからこそ、恐ろしい一方で有用なんです。そのエネルギーは別のことに使えばいい。僕の一次感情はとにかく「悲しい」だった。でもこの怒りを被害者支援や京アニ支援に活かそうと思っています」