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抗日100周年で続々とロードショーされる韓国「反日映画」の試写会に行ってみた

北村一輝と池内博之は鬼気迫る演技

2019/08/06
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 韓国では「3・1独立運動」(1919年、日本の朝鮮半島統治に抵抗した独立運動)から100周年の今年、続々と”抗日映画”が封切られている。

 年明け1月には、当時、禁止されていたハングル語の辞典を編纂しようと動いた人々の話を描いた『マルモイ』が、2月には自転車大会で日本人の有力選手を抑えて優勝した人物を主人公にした『自転車王 オムボクドン』が公開された。『鳳梧洞の戦闘』もそうした流れのひとつ。公開は8月7日だ。

『鳳梧洞の戦闘』の試写資料はモノクロ

 折しも日本の韓国への輸出規制やホワイト国除外問題で日韓の葛藤がピークに達している中での公開と相まって、「抗日映画『鳳梧洞の戦闘』反日の風に乗るか」(文化日報7月30日)という声も聞かれる。

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朝鮮独立軍が初めて日本軍に勝利した戦闘

 7月初めから始まった試写の反応をみるとまっぷたつ。果たして、内容はどんなものなのか、試写会に足を運んでみた。

 映画の試写資料はモノクローム。表紙にはその服装も顔つきもばらばらで無骨な雰囲気が漂う朝鮮独立軍の面々がずらりと並ぶ。闘士というよりいかにも近くにいそうな佇まいで、それもそのはず、朝鮮独立軍は正式な訓練を施された兵士ではなく、農民や商売人、学者などの市井の人々で構成されていた。試写に一緒に行った韓国人の友人いわく、「そんなところが、この闘いをより誇り高きものにしている」そうだ。キャッチコピーは「みなの闘い、みなの勝利」。名もなき者たちの誇り高き闘いということなのだろう。

 映画のストーリーは1920年6月、朝鮮独立軍が初めて日本軍に勝利した戦闘を描いたものだ。

朝鮮独立軍の面々。済州島から来たメンバーも登場する ©ShowBox

 舞台はかつての満州、中国北東部に位置する現在の吉林省にあった渓谷の村、鳳梧洞。1919年3月1日から始まった朝鮮独立軍の動きは満州地方にも拡大していたといわれ、映画では、朝鮮独立軍が鳳梧洞一帯の複雑な地形を生かし、谷間に日本軍を誘引して包囲し、勝利を導いた過程が描かれる。韓国ではその名から「鳳梧洞の戦闘」と呼ばれ、教科書にも記述されている歴史上、有名な闘いのひとつだ。
 
 歴史物につきものの史実考証について、制作にあたったウォン・シニョン監督は、「考証作業は大変だったが、1920年12月25日付けの『独立新聞』第88号を基準にした」(映画試写資料より)と話していて、鳳梧洞の朝鮮人村に住む末裔の人々や研究者も取材したと語っている。