日韓関係が今までにない局面を迎えている。日本の輸出管理体制の見直しに韓国側が強く反発。民間レベルでも日本製品の不買運動が起こるなど、広がりを見せている。様々な情報が錯綜するなか、この問題をどう判断すれば良いのか。韓国と文在寅大統領の実像について、韓国政治や日韓関係が専門の同志社大学教授・浅羽祐樹氏に聞いた。
◆
もはや友好国ではない
日本政府は8月2日、輸出管理の優遇措置を受けられる「ホワイト国」から、韓国を除外する政令改正を閣議決定しました。この決定により“史上最悪”と言われていた日韓関係は、一気に底が抜けるでしょう。
7月に打ち出された、半導体素材に関する輸出管理の見直しは、限られた品目の話でもありますし、自由貿易体制下でもありえる措置です。一方、ホワイト国指定の除外となると、日本側から「安全保障上の懸念がある」「もはや友好国ではない」と宣言するに等しい。ひとたび除外すれば、再び「ホワイト国(カテゴリーA)」に指定するのはハードルが高い。日韓どちらも一歩も引けない「ガチンコ対決」「チキンゲーム」の状況に陥っています。
これまでも、日韓には外交上で緊張する場面がありました。しかし、在日米軍と在韓米軍が連動している以上、安全保障上の戦略的利益を共有していた。そこが“最後の砦”でした。ところが昨年12月のレーダー照射事件で、安全保障の領域ですら、決定的に信頼関係を失ってしまった。
もはや日韓関係の局面が変わり、われわれがかつて見たことのない状況に直面しています。
「解決済み」を反故にした韓国側の理屈
今回、日本の輸出管理体制の見直しを受けた韓国側の反応は、激しいものでした。これほど強い反発は、なぜ起こったのでしょうか。
韓国は、今回の措置を「歴史問題に対する報復」と理解しています。特に、日本企業に対して元「徴用工」(旧朝鮮半島出身労働者)への賠償を命じた昨年の大法院(韓国最高裁)判決についての報復だというのです。韓国側は「大法院の判決で差し押さえられた資産の現金化は、早ければ8月と言われていたのに大幅に遅れている。まだ日本に実害が生じていないではないか。それなのに、経済的な戦争を仕掛けてきた」と捉えている。つまり、日本側が先に挑発し、本来別の領域である経済と絡めたのは国際法違反であると考えている。