「積弊清算」が歴史的使命
文大統領は、2016年10月~17年3月に起きた、朴槿恵前大統領を弾劾・罷免した「ろうそく革命」の結果として誕生した大統領です。よって、17年の大統領就任当初から、保守派の政権下で積み重なった弊害を否定する「積弊清算」を歴史的使命と自任しています。
それは、朴槿恵政権が結んだ2015年の日韓「慰安婦」合意は誤りで、その父・朴正熙元大統領が行った日韓国交正常化も「誤った過去清算」だったという前提に基づいています。そのため、「日帝強占(日本帝国主義による強制占領)」をきちんと清算しなかった保守派こそが、文大統領からすれば最も断罪すべき存在です。
つまり、文大統領は植民地期に日本に協力した「親日派」を断罪した。それだけでなく、その「親日派」の清算に失敗した保守派は真っ当な政治勢力ではないと言うのです。つまり、進歩派の文大統領にとっての対日外交というのは、韓国国内の「保守派=親日派」叩きの延長線上なのです。
文在寅政権は「革命政権」
そして、文政権の方針を理解するとき、考えるべきはこの政権が「革命政権」であるということです。朴槿恵政権という「不正な権力者」を排除した革命政権であることが、彼ら自身の正統性の根拠であり、その革命は現在も進行中なのです。
そもそも、韓国は“民の力”で、歴史を「進歩させてきた」過去があります。1960年に当時大統領だった李承晩を大規模な民衆デモによって下野させた四月革命もその一例です。
なにか問題が発生したとき、日本なら法の適正手続きで問題を解決しようとするでしょう。それに対して、韓国では、主権者である「我ら大韓国民」(韓国憲法前文)が自ら前面に出てきて、法や合意よりも「正義」や「道徳」を貫いて、歴史的飛躍を遂げようとするのです。近年の韓国の対日姿勢には、このような「革命」思考、「進歩」観がよく出ています。日本は、人権や脱植民地主義の領域で「遅れている」という認識なのです。