日本と韓国が“過去最悪”の関係に陥っている。その両国間に横たわっているのが、歴史認識問題だ。日本の貿易管理体制の見直しのきっかけになったとされる「徴用工」問題、愛知の芸術祭で改めてクローズアップされた「慰安婦」問題など、長年両国が抱え続けてきた難問だ。

 日本は“厄介な”韓国にどのように向かい合っていけばよいのか。韓国政治や日韓関係が専門の同志社大学教授・浅羽祐樹氏に聞いた。(#1より続く)

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2018年11月のAPEC首脳会議で記念撮影に臨む文大統領と安倍首相 ©共同通信社

8月15日に文大統領は何を述べるのか?

 日本政府が8月2日、「ホワイト国」リストから韓国を除外する閣議決定をしたことで、日韓関係は一気に底が抜けたといって良いでしょう。

 この緊張感の中、8月15日には韓国で「光復節」を迎えます。日本の植民地支配からの解放を祝うこの日、歴代の大統領は、日本の歴史認識について批判的に言及してきました。奇しくも、今年は「3・1運動によって建立された大韓民国臨時政府」100周年に当たります。今回、文大統領がどのようなメッセージを打ち出すのか、注目されています。

 私は少し前から、韓国の「反日」、日本の「嫌韓」の性質が変化してきたと思っています。

同志社大学 浅羽祐樹教授 ©文藝春秋

 これまでの「反日」は、日本の首相の靖国神社参拝や閣僚の「妄言」など、日本側の動きによって生じるところが多かった。それが最近は、韓国側の動きによって、「嫌韓」が一気に広がっています。2018年12月のレーダー照射問題、韓国の文喜相国会議長による「天皇は戦犯の息子」発言、そして、いわゆる「徴用工」(旧朝鮮半島出身労働者)問題など、韓国側の動きが元になって、「もう知らんわ、韓国」「韓国なんて付き合いたくない」という鬱積が日本で臨界点に達しているのです。

 その背景の一つは、韓国の国力が急激に成長したことで、日本による植民地時代の過去を遅ればせながら「正す」力が付いたと自負していることにあります。