「正しい歴史」と「間違った歴史」
では、特異な「歴史」観を有する韓国に、日本はどのように向き合えばよいのでしょうか。
留意すべきは、韓国の「正しい歴史」「間違った歴史」という概念です。
日本では、「事実として起こったこと」が実証主義的な歴史だと認識します。好むと好まざるとにかかわらず、史料に基づき、過去を再構成します。
それが韓国では「道徳的に正しい事」「本来あるべきこと」が「正しい歴史」とされるのです。その一方で、「道徳的に劣っている事」「歩むべきではなかった道」は「間違った歴史」となります。
例えば、1910年に日本の植民地になったことは厳然たる事実ですが、「間違った歴史」とされる。一方、他国には全く承認されていない、1919年に上海で建立が宣言された大韓民国臨時政府こそが「正しい歴史」。日本の植民地支配に屈してしまったのも「間違った歴史」ですし、それを「正す」ことができなかった65年の国交正常化も「そもそも無効」というわけです。
文在寅は「革命家」であると言いましたが、この部分に彼の特性が色濃く表れています。この価値観は進歩派の政権に多い傾向があります。特に文在寅政権は「正義に見合った国」を標榜し、「間違った歴史」は「正さなければならない」という姿勢で、国内政治だけでなく対外政策にも臨んでいます。
日本は何度も「おわびの談話」
歴史認識をめぐる日韓対立については、先述の通り、日本が全く何もしてこなかったわけではありません。
日本はこれまで何度も、総理大臣の名前でメッセージを送ってきました。1995年の村山富市政権時に出された村山談話に代表される、おわびの談話です。植民地支配に対しても、「三・一独立運動などの激しい抵抗にも示されたとおり、政治的・軍事的背景の下、当時の韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられました」(2010年の菅直人首相談話)という認識が示されています。