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 ハンギョレ新聞は、「ついに破局を選んだ安倍、国家の力を総結集して立ち向かわなければ」と題し、「今回の事態は韓国大法院の強制徴用工賠償判決と安倍政権の貿易報復から発火した。しかし、根本的には冷戦時代、韓国の軍部独裁政権と日本が締結した1965年韓日体制をこれ以上古びた姿でそのまま維持できないという象徴的なサインのように思う」とし、「経済への打撃が大きいからといって、どんなことをしてでも和解しようと、簡単に葛藤を解消しようとしてはいけない理由がここにある」と論じた。

 つまり、「植民地支配が合法だったか否か」を曖昧にしている1965年の日韓基本条約を見直すべきと主張している。

1965年の日韓基本条約締結に関する外交文書の一部 ©時事通信社

現地で囁かれる、文政権の“戦略的放置”説

 前出の中道系の韓国紙記者はこう解説する。

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「青瓦台は、昨年10月の大法院(最高裁)の判決を予想していなかったはずがありませんが、立場を表明しなかった。判決後は、李洛淵国務総理が専門家の話を集めてさまざまな対処案をまとめて文大統領に提出したといいますが、そのまま放置された。

 そして、6月19日に韓国側から出した韓日企業が賠償する案も、日本が仲裁委員会への人員を選定する返答期限を過ぎた後の、G20直前に出しました。7月に特使を送り、そうした経緯について日本に説明したことを明らかにしたのもホワイト国除外が決定された後で、まるでアリバイ作りです。

 あくまでも推測の域をでませんが、徴用工問題で日本の出方を予想して、かねてから燻っていた1965年日韓基本条約を再び見直す作業に着手しようと、意図された戦略的放置ではなかったのかという見方が一部ででているのです」

「ホワイト国に戻すということはあり得ないのか」

 5日、文大統領は首席秘書官・補佐官を招集した会議でも痛烈に日本を批判し、そして、南北が経済協力すれば、「一挙に日本の優位に追いつくことができる」とした。北朝鮮との経済協力を「南北平和経済」と呼び、共闘して日本に対抗したいとも語ったが、「米軍との訓練が始まったその日に、さらには日本とのこの事態に非現実的な北朝鮮をとの協力関係を盛り込んだ意図がどこにあるのか……」と前出記者の記者は話す。北朝鮮は翌6日、再び飛翔体を発射している。

 文大統領が果たしてどんな考えを持っているのか、韓国では今、8月15日の文大統領の談話に注目が集っている。“安倍憎し”の声が燃え上がる一方で、日本が実際に韓国をホワイト国除外を施行する28日まで、日韓関係をなんとか鎮静化できないかという声も上がる。

 6日付、保守寄りの中央日報は、「光復節(8月15日)、日本の天皇即位(10月22日)、東南アジア諸国連合(アセアン)+韓中日首脳会談(11月)、アジア太平洋経済協力会議(APEC、11月)」が日韓の今後の分水嶺だとした。

 ある地上波のニュース番組を見ていたら、キャスターと記者がこんなやりとりをした場面があった。「施行は28日といわれるが、それまでホワイト国に戻すというようなことはあり得ないのか」、そうキャスターが訊くと記者は、「覆ったことはないようです」と答えた。一縷の望みという思いが透けて見える。

 韓国をホワイト国から除外する前、日本人の知り合いがこんなことを言っていた。「日本が追加措置をすれば、文大統領の支持率は上がるのではないか」。

 文大統領の支持率は2日単独では51.3%(世論調査会社リアルメーター、7月29日~8月2日)と微増したが、週平均では49.9%と前週から下落していて、それは北朝鮮のミサイル発射によるものと分析された。

 今でこそ、冒頭のようなデモに一般市民が多く参加するような大きなうねりにはなっていないが、これから、韓国の人々の対日感情がどう変わっていくのか。

 6日の朝からはソウル市内中心部に「BOYCOTT JAPAN  行きません、買いません」と記された旗が次々とかけられた。ソウル市中区庁の指示だという。

ソウル市内中心部にかけられた旗。「BOYCOTT JAPAN 行きません 買いません」とある(筆者提供)

 3日のデモの日、背後からこんな声がした。

「おっ、集っている集っている。こうじゃないと。みんなでこうやって団結しないといけない」

 持っていた旗をみると、仁川に拠点を置く団体のひとりだった。 文大統領の支持者の闘志に火をつけたのは確かなようだ。