埼玉県熊谷市の「夏」と言えば、八木橋(やぎはし)百貨店の入口に設けられた高さ4メートルの大温度計だろう。
今年は9月20日開会のラグビーワールドカップで熊谷市が会場の一つに選ばれたこともあり、ラグビーボールをあしらったデザインだ。「猛暑にタックル!!」と大書きされている。
ここを8月2日に訪れた。
「暑さ日本一を、市としてPRしたことはありません」
関東甲信越地方の梅雨は7月29日に明けた。翌日から猛烈な暑さとなり、熊谷の最高気温は連日36~37度台が続く。さすが、昨年7月23日に国内最高の41・1度を記録した「日本一暑いまち」だけのことはある。
この日も午前11時に34度を超え、最高気温は37・4度まで上がった。
ところが、熊谷市役所は「暑さ日本一」ではなく、「暑さ対策日本一」だと宣伝している。
「暑さが日本一であることを、市としてPRしたことは一度もありません。定住施策に影響が出ますし、観光にもマイナスですから」と市の担当者が説明する。
ええっ、そうなのか?
「あついぞ!熊谷」のキャッチフレーズもあったが……
同市では2004年、最高気温が35度以上となる「猛暑日」を28日間記録し、当時の日本一になった。市役所は翌年から「あついぞ!熊谷」というキャッチフレーズで市民イベントの支援などを行い、太陽が汗をかいているシンボルキャラクターも「あつべえ」と命名した。
「あれは気温の暑さではなく、市民の気持ちの熱さ、人情の厚さを訴える施策でした。その後、熊谷市の最高気温が日本一を記録したため、メディアに結びつけて報じられてしまったんです」と担当者は強く否定する。
それまでの国内最高気温は1933年、山形県山形市で記録された40・8度だった。これを2007年、熊谷市と岐阜県多治見市が抜いて40・9度を観測した。
確かに「あついぞ!熊谷」は、その2年前から行われていた事業だった。だが、暑さに引っかけたネーミングで、支援した市民イベントも暑さに関連するものが多かった。