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「暑さ日本一になって恐ろしく人が来るようになりました」

 このような事業展開が考えられるようになったのは、暑さを逆手に取った地域起こしの成果だ。

「もうこれ以上暑くなる必要はありませんが、やっぱり1位でないとダメです。暑さ日本一になって、人が来ないどころか、恐ろしく人が来るようになりました。だからこそ様々なチャレンジができるのです」と小林さんは言い切る。

 知名度が上がり、誘客が進んだことで、商店街全体での効果も出始めた。

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 妻沼の中心部には「妻沼聖天山(めぬましょうでんざん)」と呼ばれる仏教寺院がある。本殿は江戸時代、農民らの寄付で44年かかって建築された。

 色がくすみ、劣化が進んでいたが、2011年まで8年がかりの修理で、極彩色の外壁が復元された。12年には国宝に指定されている。

国宝になった妻沼聖天山の本堂(熊谷市妻沼)

「当初は聖天山の参拝客を目当てにして商店街の活性化を図ろうとしていました。縁結びに御利益があることから、縁結びをテーマにした食事メニューを飲食店で出すなどしました」と、商工会の小川さんは語る。

暑さに挑戦し、チャンスを広げた妻沼の商店街

 だが、他力本願で成就するのを待つ前に、熊谷市の知名度が上がって人が集まり始めていた。そこで、小林さんが代表を務める若手経営者の集まり「めぬま商人会」と商工会が協力して、地道な空き店舗対策を進めた。店舗を細かく調査して、大家と借り手の調整を行ったところ、元理容店をしゃれた家具店にしたり、元薬局をカフェバーにしたりする若者が現われ、6店舗が進出した。

「今では空き店舗に入居した店に30~50代の女性が来るようになり、まちがおしゃれになったと言われています。新旧の相乗効果でお客さんが増えています」と、小川さんは微笑む。

 訪れた人々が、強い日差しの中でも安心してまち歩きができるよう、店舗や無料休憩所など22カ所が伝統工芸品「熊谷染」の日傘や番傘を置いた。

日傘を22カ所で貸し出す(大福茶屋さわた)

 小林さんは「めぬま商人会の仲間とは、着物パスポートも作ろうと企画しています。レンタルの着物で商店を巡ってもらい、特典をつけるのです。妻沼は戦災に遭わなかったので、雰囲気のある店舗が多く、着物にぴったりですよ」と意気込む。

 日本はもう、猛暑から逃れられなくなった。命や健康を守る対策が必須になっている。しかし、守るだけでいいのか。攻めも必要ではないか。暑さに挑戦し、チャンスを広げた妻沼の商店街は、これからの私達の生き方を暗示しているような気がする。

写真=葉上太郎