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「女流棋士は対局数が少ない」清麗戦主催にかけるヒューリック社の思いとは

「女流棋士は対局数が少ない」清麗戦主催にかけるヒューリック社の思いとは

開幕戦では、絶対女王・里見香奈女流五冠の強さが際立った

2019/08/10
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「最高峰の女流棋戦」と銘打たれて、今年より新設された「ヒューリック杯清麗戦」。その第1期も決勝五番勝負を迎え、いよいよ大詰めだ。五番勝負で相対するのは里見香奈女流五冠と甲斐智美女流五段。新棋戦の開幕を飾るのにふさわしい実力者がそろったと言える。

 五番勝負の開幕戦が行われたのは8月3日。その第1局レポートと同時に、新棋戦設立についても見ていきたい。

一般棋戦でも好成績をあげている里見香奈女流五冠(写真右)

やり残したことは同時全冠制覇くらい?

 まず、里見女流五冠の活躍については今更触れるまでもないだろう。現在の女流棋界では一頭地を抜いた存在と言ってよい。もはや、やり残したことは同時全冠制覇くらいではないか、という声も聞こえてくるくらいだ。その快挙のためにも、「初代清麗」の座は譲れない。

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2015年以来、4年ぶりのタイトル戦登場となった甲斐智美女流五段

 対する甲斐女流五段。タイトル戦は2015年以来の登場となるが、獲得タイトル7期は現役女流棋士中、第5位の実力者である。何より、タイトル戦番勝負において「里見を2度負かした」女流棋士は甲斐しかいないのだ。

 今期の清麗戦予選でも直接対決で里見を下している。番勝負に臨むにあたり「里見さんのような強い方と指せるので、とても緊張しますがどんな対局になるか楽しみにしています。内容の良い将棋を指せたらいいなと思っています」と意気込みを新たにした。

目新しい「2敗失格システム」

 ここで、清麗戦のシステムについて触れておきたい。まず参加資格は「女流棋士」のみであり、アマチュアや女性奨励会員の参加枠はない。参加者全員によるスイス式トーナメントの予選を行い、6勝したものが本戦(第1期は4名によるトーナメント戦)に進出する。そして6勝する前に2敗すると予選敗退が決まる。

 今期は上記2名の他、中村真梨花女流三段と頼本奈菜女流初段が本戦に進出。里見が頼本を、甲斐が中村を下しての決勝五番勝負となった。

 新棋戦のシステムで一番目新しいのは「2敗失格システム」だろう。従来の女流棋戦は、一発勝負のトーナメント戦がほとんどで、棋戦によっては予選を勝ち進んでようやくリーグ戦に参加できるという形式だった。このため初戦で敗退すると、来期まで対局の機会が得られなくなってしまう。真剣勝負の場が少ないというのは実力向上への大きなマイナスだ。

第1局の大盤解説会には多くのファンが集まった。解説者は、飯野愛女流初段と高見泰地七段。