1974年に女流棋士の第一号となり、初代女流名人、初代女流王将などタイトルを通算7期獲得した蛸島彰子女流六段。しかし、その道のりは平坦ではなかった――。

「女は将棋に向かない」「やっても無駄だ」という根強い神話があり、自分が負けると「だから女は」と言われてしまう。それでも挫けず盤に向かい、女性の仲間を増やしてきた。

女性の進出が早かった囲碁界

 確かに将棋界において、男女の実力差は今現在、歴然としている。しかし、それはどうしてなのか。

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「お隣」の囲碁界に目を転じると、男女の実力差はここまで開いていない。男女が同じ条件で戦い、待遇面も同等だ。

 おそらく、これは歴史から来るのだろう。囲碁界における女性棋士の歴史は長い。幕末から脈々と女性棋士はおり、活躍してきた。囲碁界の運営にも関わり、発言権も強かったと聞く。

 一方、将棋界では戦後生まれの蛸島彰子が第一号なのだ。女性たちの参入が、だいぶ遅れた。そこから来る差異ではないだろうか。その点をどう考えているのか。蛸島に聞いた。

(全2回の2回目/#1より続く)

 

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「女性の棋士」はきっと現れる

 もちろん、将棋界の女性でも女流棋士という形のプロではなく、男子と混じって奨励会に入り、四段になる道を選ぶことはできます。そこで卒業すれば、女流棋士ではなく、女性の棋士ということになりますね。

 ただ今のところは、まだ、奨励会の三段リーグを突破して四段になれた女性はひとりもいない。現在は女流棋士だけです。

 

 里見香奈さんは奨励会に入って男性と同じ条件で戦い、四段を目指し、女性として初めて三段まで行きました。でも、残念ながら、年齢制限で奨励会を退会することになった。やはり三段リーグを勝ち抜くというのは、とても大変なことなんです。里見さんに続いて、今、西山朋佳さんも三段リーグで戦っていて、指し分け以上の成績も収めています。四段になってくれたら嬉しい。期待して見ています。

 私はそう遠くない将来に、女流棋士ではなく、男子と同じ条件で奨励会を戦って四段になる、女性の棋士が出ると思っています。

 確かに今までは、男女に圧倒的な実力差がありました。脳の構造が違う、女には向かない、と説明されてきましたが、私は歴史や環境から来ていると思うのです。少し前までは女性で将棋を指す人がほとんどいなかった。でも、すそ野が広がれば、自然と強い女の子がその中から現れるはずです。