女流棋戦の対局数は一気に3割増しに
新棋戦について、主催社であるヒューリック株式会社の担当者に話を伺った。
「もともと、弊社会長の西浦(三郎氏)と、日本将棋連盟の佐藤会長(康光九段)に縁がありまして、男性棋戦の棋聖戦では特別協賛という形でご協力させていただいております。弊社は社会貢献活動にも力を入れており、日本文化の象徴である将棋界にも協力できればという思いがありました。棋聖戦だけでなく、様々なイベントを日本将棋連盟と行っておりますが、そのような中で『女流棋士は対局数が少ない』という話を聞いた西浦が、女流棋士のために立ち上げたのが清麗戦です」
目玉の一つである2敗失格システムについては、
「女流棋士の対局を増やすために日本将棋連盟からご提案をいただき、いいシステムだと思いました。昨日(8月2日)に行われた第1局前夜祭でも、女流棋士の方から多くの喜びと感謝の声をいただき、設立の意義があったと思います」
と語った。
新たな棋戦が設立されることは、女流棋士にとっては大きな励みになり、また1度負けても更なるチャンスがあることで、より熱意が入る。
第1期清麗戦の予選、本戦の総対局数は122局。清麗戦が行われる以前の女流棋戦の年間総対局数は450局ほどだったので、一気に3割増しとなった計算である。
「(挑戦者を)打ち破り続けているのは偉大だと思います」
お台場にあるホテル「グランドニッコー東京 台場」で行われた第1局では、後手の里見が得意の振り飛車に進めた。中盤で甲斐が局面を動かしに行ったが、結果的にはそれがまずく、うまく飛車をさばいた里見が優勢になる。そのあとも緩急自在の指し回しをみせて快勝、初代清麗に向けて幸先のいいスタートを切った。
里見は「自信があったわけではありませんが、実戦的にまずまずの展開にできたかなと。第2局まで少し時間が空くので、しっかり勉強して臨みたいと思います」と感想を語った。
第1局の立会人を務めたのは中村太地七段。過去には王座のタイトルを取り、タイトル戦番勝負の舞台も幾度となく踏んでいるが、立会人は初の経験だ。
「新棋戦の第1局で務めさせていただくことは大変光栄なことで、身の引き締まる思いでした。対局者としての経験を活かして、立会人の視点を考えていましたが、特筆すべきエピソードがなかったということは、トラブルなしで済んだということでよかったと思います」と述べる。
勝者の里見については「現在は将棋の内容を見ても充実していますし、男性棋士相手にも力で勝っています。女流五冠という立場である以上、全ての女流棋士が彼女の打倒を目指しているわけですが、打ち破り続けているのは偉大だと思います」と語った。
新棋戦の開幕戦は、絶対女王が存分に強さを見せつける一局となった。続く第2局は8月24日に鹿児島県指宿市の「指宿白水館」で行われる。第1局をみたヒューリックの担当者は、「両対局者に熱い戦いを繰り広げていただき、感謝です。第2局も本局以上の熱戦を期待したいです」と新たなドラマに思いを馳せていた。
写真=相崎修司