“それでもできること”の先を描いていく
――あの作り込みの理由がよくわかりました。では最後になりますが、『だから私は推しました』、今後の注目ポイントがあればぜひ教えてください。
森下 はい。今作は地下アイドルをファンが全力で推して、それでハナたちが、たとえば世界的なスターになるとか、地球を救うとかそういう話ではないです。あと、いま芸能界が揉めているようなギャラの問題とか、ある種ブラックな構造に関しては、ドラマの中ではたぶん解決策を提示できないし、提示したとしても嘘になるので、そこに答えを出すこともできません。愛ちゃんは世界を救ってくれるスーパーヒーローではないんです。
でも、そんな中で、「何が普通か」という議論は一旦置いておいて、愛ちゃんという普通の人が、それでもできることは何だろう、と。そして“それでもできること”をしていった先には、何かが待っているはず。では、そこには何が待っているのか。今回のドラマは、そうしたことを考えて作っています。ということで、今後も愛ちゃんの右往左往っぷりに注目してください。
――サニーサイドアップの展開にも期待しています。
森下 実は第5回か第6回あたりに、すごく楽しみにしているシーンがあるんです。サニーサイドアップがある仕事に挑戦するんですが、それがどんな風に撮られているのか……。私もまだ観ていないので、ワクワクしています(笑)。
写真=末永裕樹/文藝春秋
森下佳子(もりした・よしこ)
1971年大阪生まれ。東京大学文学部宗教学科卒業。2000年『平成夫婦茶碗』(日本テレビ)で脚本家デビュー。『世界の中心で、愛を叫ぶ』『白夜行』『JIN-仁-』『義母と娘のブルース』(以上、TBS)など、話題作を多数手掛ける。2013年度下半期に放送された朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』で、第32回向田邦子賞と第22回橋田賞を受賞。2017年には大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK)の脚本も手掛けた。