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【東京がんストーリー】がん患者が取材する「がん」家族とその後 遺された夫が外した結婚指輪

2019/09/05
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最近、結婚指輪を外した理由

 今、お子さんは社会人と高校生。「嫁さんの血が半分入っているからか、死んだ後もそんなに落ち込まず、テンションが高いまま」だと言う。

 そしてアタゴさんは最近、結婚指輪を外した。再婚を考えているものの、なかなか相手が見つからないと笑いながら話す。

「もうすぐ50歳だからね。人生を一日でたとえたら俺なんて20時半くらい。普通の女の人はもう少し早い時間から遊びたいでしょ」

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 アタゴさんらしい独特の例えに笑ったが、「信頼できる、応援してくれる他人がそばにいて欲しい」という言葉に、胸がギュッとなった。

 アタゴさんと会った直後、奇しくも希少がんで奥さんを亡くした方にお話を聞く機会があった。

 彼もやはり、「今日はなにを食べよう」「どんなリハビリをしよう」と夫婦で相談し、亡くなる瞬間まで、互いに“死”を口にしたことも考えたこともなかったという。

 

 ふたりから同じ言葉を聞いたことで、すとんと腑に落ちた。

 むやみに怖がっても、しゃーないのだ。

 病状がどうなろうとも、その中で日々、ベストと思うことをやっていくだけ。そんなシンプルな答えをもらった気がする。

写真=末永裕樹/文藝春秋

この記事は、文春オンラインとYahoo!ニュースによる共同企画記事です。悲劇のヒロインみたいにクヨクヨしたいわけじゃない。でも、過剰に前向きもなんかヘン。「がん」を取り巻く微妙な空気になじめない……。2019年2月、自身のホームページで「大腸がん」をカミングアウトした35歳の女性ライター・小泉なつみさんが、日常に現れた「がん」とどう付き合っていけばいいのか、東京で「がん」してる方々に話を聞いていきます。9月3日から4回にわたって配信中です。

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