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冷えとしびれから手を保護するため、いつも白の綿手袋を

 説明すると、抗がん剤の副作用で末梢神経がしびれ、冷たいものに触るとビリビリっとくる日が続いていた時。冷えとしびれから手を保護するため、いかなる時も白の綿手袋をはめていた。

 面倒だったけど、不思議なものでそういう生活を1カ月も続けていると、それが当たり前に思えてくるのである。

 

 ただしその抗がん剤を使い続けた場合、こうした副作用が一生、体に残ってしまう可能性があった。いつやめれば後遺症が残らずに済むかも、はっきりとしたデータはなし。

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 そんな時、高熱&下痢で脱水するほど体力が低下。その際に先生から抗がん剤を減らす提案があり、それとともに言われたのが「いつも手袋してるの、普通じゃないよね」という一言だった。

 患者っぽくせず普通でいたいと願い、仕事も続けていたけれど、一番目につく部分で患者感を全開にし、それを当たり前のものとして受け入れていた自分……。

 そうだよな。いつも白手袋してるなんて、普通じゃない。

 抗がん剤を減らす決断に恐怖もあったが、先生の言葉で己の体の悲鳴を受け止め、その後は減薬し、すべての治療工程を終えたのだった。

「化学療法(抗がん剤)をやるにしてもセルフコントロールが必要だし、もし病状が進行したとしても、自分で納得して決断できている人の方が、いきいきと生活している印象があるんです」

 がん看護専門看護師の小湊さんもこう言っていたが、がん治療は本当に決断の連続だ。

腫瘍切除のための入院は10日間。退院の日にリストバンドを切ってもらったとき、「シャバに出られる!」と浮き立った。

 どこで手術する? 術式はどうする? 病室のベッドは廊下側でいい? CT検査すると被爆するけど、やる? 

 大きいものから小さいものまで、毎日なにかを決めないといけない。ともすると、流されるままなんとなくサインし、ベルトコンベアのように手術台までいってしまう。

 そんな時、小湊さんは「まず今できることからやっていきましょう」と声をかけると言う。渦中にいると、この一言が本当に沁みる。今も仕事でテンパると、「できることからひとつずつ」と反芻する魔法の言葉だ。